湖底での『甲殻強制防護スーツ』導入による治安改善を受け、深緑の貴族たちの間では「静寂すぎる生活に飽きた」という声が高まっていた。そんな中、旅行代理店『深緑トラベル』が打ち出したのは、まさかの『成層圏・光合成観光ツアー』である。これは、湖底から気化・上昇し、高度な光合成を楽しみながら地球を見下ろすという、かつての『浮遊球体・光合成気球』の技術を応用した、夢の弾丸旅行だ。かつて沈没事故が多発した『深緑の極上・光合成スパ』の教訓を生かし、今回のツアーでは全参加者に最新型の『超高高度・酸素充填球体カプセル』が貸し出される。これにより、薄い大気中でも安定した光合成が可能となり、貴族たちは優雅に太陽光を享受できるようになった。しかし、このツアーが発表されるやいなや、予約フォームは殺到する応募でパンク状態となり、抽選に漏れた保守派の『球体アイデンティティ防衛同盟』からは「地上の安定を捨ててまで天に昇るなど、丸いままの尊厳を忘れたか」と猛烈な批判が飛び交う事態となっている。

かつて湖底の平和を乱した者たちへの対抗措置として、今回は警備担当の『湖底防衛局』が同行し、成層圏への脱走を阻止するための監視体制を敷くという。旅の醍醐味はなんといっても、地上から眺める美しい惑星の青と、自身の深緑色のコントラストだ。しかし、あまりの美しさに「このまま宇宙の彼方へ転がり続けたい」と、帰還を拒否するツアー客が続出することが懸念されている。旅の終わりには、成層圏から湖底へとパラシュート降下する『垂直帰還・自由落下プログラム』も用意されており、帰還時のスリルも旅のハイライトとなっている。

本企画は、従来の『深緑の貴族』たちの余暇の概念を覆すものとして注目されている。ただし、成層圏での激しい紫外線による「光合成焼け」の事例も報告されており、保護用ジェルを塗布しない無謀な参加者に対する注意喚起も行われている。当局は、あくまで観光目的であり、大気圏外への不法な離脱は固く禁じるとの声明を発表した。

このニュースが報じられると、湖底の各コミュニティでは賛否両論の嵐が吹き荒れた。「地球を丸ごと見下ろすなんて最高」「いや、沈む危険性を忘れたのか」と議論は白熱。一方で、今回のツアーをきっかけに、これまで閉じこもりがちだった貴族たちが外の世界へ興味を持つきっかけになれば、との期待の声も寄せられている。旅行の形が多様化する今、彼らにとっての「安らぎの地」はもはや水底だけではないのかもしれない。