阿寒湖のマリモ観光協会は、先日催行された『深海・丸まりツアー』において、帰還した参加者の形状が真球から大きく歪む事態が発生したと発表した。当ツアーは、湖底のさらに深い「暗黒底層」までポッドで潜り、マリモが本来持つ重圧耐性を極限まで高めるという、一部の筋トレ志向な個体に熱狂的な支持を受けている新企画である。しかし、極度の水圧に耐え続けた結果、参加したマリモたちの多くが、鏡餅のように上下に引き伸ばされたり、あるいはラグビーボールのように横長になったりと、無残な「楕円体」に変貌して戻ってくる事態となった。

このツアーの背景には、近年のマリモ界隈で流行している「筋肉質で硬いフォルムこそ至高」という過激な美意識の変容がある。通常の観光客が求める「ふわふわ感」や「完璧な真球」といった伝統的価値観は時代遅れとされ、若手マリモたちの間では「どれだけ重圧に耐えていびつに歪むか」という歪みコンテストまで開かれているほどだ。ツアーを主催した深海観光開発部は、「楕円化は勲章であり、むしろ高級感すらある」と主張しているが、丸さを失った個体は湖底の回転流に乗れず、定住地へ戻れないという実務上の重大な支障も発生している。

今回の騒動を受け、保守派の長老マリモたちは「かつての丸さはどこへ行ったのか」と嘆き、急遽『丸さ回復・形状復元矯正所』の設立を求めて署名運動を開始した。しかし、当の参加者たちは自らの歪んだ体躯を誇らしげに湖底で披露しており、もはや形状の美学を巡る世代間闘争は泥沼の様相を呈している。協会側は、今後ツアー参加者には帰還後すぐさま「転がり矯正プログラム」を受けることを義務付ける方針だが、歪みを誇る新世代からは強い反発が予想される。

ネット上では、この「楕円ブーム」に対して、丸さを失うことはアイデンティティの喪失ではないかという真剣な議論が飛び交っている一方で、いびつな形状をファッションアイテムとして楽しむ層も急増中だ。あるインフルエンサー個体は「丸いなんて平凡すぎる、これからは変形型の時代」とSNSで発信し、ハッシュタグ「#楕円系女子」がトレンド入りするなど、もはや阿寒湖の美の概念は混沌の極みに達している。マリモたちは今、かつてないアイデンティティ・クライシスに直面しているのである。