湖底界に激震が走っている。長年、阿寒湖の深淵で優雅な自転を続けてきたマリモたちが、突如として『球体完全主義連盟』が強行した「転がり回避規制」に対し、猛烈な抗議デモを開始した。この規制は、あまりに高い真円度を誇る個体が、湖底の起伏を無視して「高速直進ドリフト」を繰り返すことで、周辺の若手個体の毛並みを乱しているという苦情に基づくものだ。連盟は、一定以上の速度で転がる個体に対して「強制停止用重り」を装着させる方針を打ち出したが、これには湖底の若手たちが猛反発。彼らは「転がりこそが我々の魂の叫びであり、物理法則に抗うことこそが自由の証だ」と声明を発表した。この騒動は瞬く間に湖底全域へ広がり、現在は大規模な「停止座り込み」が行われている。

今回の発端は、先週行われた『全湖底スピン選手権』で、時速3メートルという驚異的な記録を出したベテラン個体が、ゴール後に制御不能となり、周辺の藻類集落をなぎ倒した事故にある。連盟はこれを「公共の福祉に対する脅威」と断定したが、現場からは「あれは芸術的なスピンであった」と擁護する声も多い。現在、湖底の治安を守る『毛玉自警団』が調停に乗り出しているが、双方が「真円度」の定義を巡って平行線をたどっており、事態は長期化の様相を呈している。

『球体完全主義連盟』は、これまでもマリモの美容や形を統制する組織として知られてきたが、今回は個人の「移動の自由」にまで踏み込んだことで、その権威は地に落ちたとの指摘もある。かつてないほど深刻な分断が生じている湖底社会だが、一部の中立層からは「この際、全員で湖面に浮き上がってストライキを敢行すべきだ」という過激な意見も出ている。冬の到来を前に、静寂な湖底がこれほどまでに騒がしいのは前代未聞の出来事だ。

このニュースに対し、湖底住民からは困惑と怒りの声が相次いでいる。「転がる権利を奪うなんて正気か」「重りをつけるのは人権ならぬ毛権侵害だ」「若手のドリフト練習を見て育った身としては、あの速度感が無くなるのは寂しい」といった意見が主流を占めている。中には、「そもそも自分たちは光合成を優先すべきではないか」という原点回帰を説く冷静な投稿もあり、SNS上の論争は収束の気配を見せていない。事態を重く見た一部の古参個体は、仲裁のための「円卓会議」を招集したが、その円卓すらも「完全な球体ではない」という理由で、開始早々に連盟から解散命令を下されるというコントのような結末を迎えている。