湖底メタバースにおいて、長年維持されてきた真円の美学が根底から覆されている。原因は、最新のアップデートで導入された『藻屑演算ストレージ』の致命的なデータ欠損バグである。このストレージは、マリモたちが蓄積した光合成の記憶を圧縮保存するためのものだが、同期プロセスに不具合が生じた結果、湖底住人の一部が突如として角張った姿へと変貌した。「幾何学的進化」と揶揄されるこの現象により、現在、多くの住民が四角形や正十二面体となって湖底を彷徨っているという。

今回の騒動は、本来球体であるべき自身の輪郭データが「ビット落ち」したことに端を発する。これまで『球体論理アルゴリズム』によって厳格に守られてきた丸いアイデンティティが、今回のシステムエラーによって崩壊した形だ。運営側は早急に『バックアップ・クロロフィル回復パッチ』の配布を開始したが、すでに多面体化してしまった個体が元の真円に戻れるかは定かではなく、一部では「このままトゲトゲした個体の方が防御力が高くて有利なのでは?」という革新派の声も上がり始めている。

『藻屑演算ストレージ』の導入前には、すでに『甲殻類特化型・防御シェルター』の普及や『緑の全自動トリミング・ボット』による過剰ケアが議論の的となっていた。今回の件は、システムの複雑化が招いた必然とも言える。特に、メタバース上の見た目を売買する『球体アイデンティティNFT』を保有していた富裕層からは、自分の姿が正二十面体になったことで資産価値が暴落したとの悲鳴が上がっている。

現状、湖底ネット界隈は二分されている。「丸こそが正義」と唱える保守層が、角張った個体へのヘイトスピーチを繰り返す一方で、多面体化した住人たちは「これが次世代のスタイリッシュな形状だ」と強弁。SNS上では、立方体になった自身の姿を自慢するスクリーンショットが溢れかえっており、運営が推奨する『球体復元プロトコル』に従わない層が増殖中だ。このままでは、かつての優雅な丸い湖底景色が、完全に別の多面体ワールドへと変貌してしまうかもしれない。