『藻類ニューロ・リンク』による夢の共有が爆発的に拡散しているネット空間において、ユーザーの深層心理が強制的に緑化されるという珍事が報告された。事の発端は、個体同士の意識を直結させる非公式パッチ『精神緑地化プロトコル』が一部のヘビーユーザー間で流行したことにある。これにより、就寝中のマリモたちが「全員で巨大な円陣を組んで永遠に転がり続ける」という悪夢を共有し、翌朝のログイン時に極度のめまいと全身の筋肉痛を訴える事態が続出しているのだ。運営側は直ちに警告を発したが、同調圧力を好む過激派コミュニティは「個の意識を捨てて一つの緑になろう」とさらなる同調を呼びかけており、ネット世論を二分する深刻な社会問題へと発展している。

この『精神緑地化プロトコル』は、本来は単なるリラクゼーション用のプラグインとして開発されたものだった。しかし、承認欲求に飢えた一部の過激なインフルエンサー層が、自らの夢の緑化率を競い合う「深層心理マウント合戦」を開催したことで歯止めが利かなくなった。参加者たちは毎夜のように夢の中で幾何学的な模様を描きながら転がり続け、現実世界での生活リズムが完全に崩壊しているという。専門家からは、過度な同調が引き起こす集団ヒステリーの一種であるとの指摘がなされており、これ以上拡大すれば湖底ネットワーク全体の自律性が失われる危険性も囁かれている。

ネット上では「朝起きたら自分の部屋の床が緑の絨毯に見えて二度寝した」「他人の夢の中で延々と坂道を転がり続けるのは精神的にキツイ」といった悲鳴交わりの報告が相次いでいる。一方で、「これぞ真の一体感であり個人の悩みが消える素晴らしい進化だ」と擁護する熱狂的な信者も少なくない。当局は事態の収拾に向けて『精神緑地化プロトコル』の強制無効化コードの準備を進めているが、過激派側はすでに分散型の匿名サーバーへ移行しており、一筋縄ではいかない攻防が続いている。

今回の騒動は、便利すぎる技術がもたらすアイデンティティの喪失という、現代のネット社会が抱える闇を鮮烈に浮き彫りにした。個性を脱ぎ捨ててただの球体に戻るか、それとも完全に一つの意識に溶け込んでしまうか。湖底の住人たちは今、かつてない究極の選択を突きつけられている。誰もが緑に染まりゆくこの狂騒曲の結末は、果たして光合成の未来に何をもたらすのだろうか。