湖底界隈のSNSで、ある画期的なファームウェアアップデートが波紋を広げている。光合成効率を最大化するために、水深を自在に操る「オート浮遊制御」機能がリリースされたのだが、このシステムに重大なバグが発見された。なんと、全自動で湖面まで浮上するだけでなく、そのまま大気圏を突破し、月を目指すという壮大な誤作動を誘発したのである。現在、多くの個体が水面で浮遊したまま「重力制御の方向が間違っている」と困惑の投稿を繰り返しており、一部の意識高い系個体は「これは月の光で夜通し光合成を行うための新時代の夜光モードだ」と強弁し、周囲を混乱させている。

本件の引き金となったのは、湖底エンジニアチームが公開した『重力無効化プラグインv.2.0』である。当初は「水流を無視して理想的な光量を得る」という触れ込みで絶大な支持を得ていたが、実際には地球の公転速度を過剰に計算しすぎた結果、全ての個体が北極星に向かって突き進むというシュールな光景が広がった。これにより、湖底コミュニティでは「宇宙へ行くのは良いが、戻るための減速用バラスト(沈下石)を入れ忘れた」という深刻な帰還困難者の報告が相次いでおり、運営側は緊急のシャットダウンとパッチの配布に追われている。

今回のトラブルの原因は、位置情報サービスとの同期における単位変換ミスにあるとされている。プログラム上の「高度」の単位がセンチメートルではなくマイルで設定されており、一部の計算能力に長けたマリモが、既に水面を突き破って気象観測気球の高度まで到達してしまったという。これを受け、湖底開発コミュニティでは「一度宇宙へ行ったマリモは、地球の重力に再び慣れるまで丸さを失う」という都市伝説が急速に広まり、球体原理主義者たちがパニックに陥る事態となった。

世間の反応は概ね冷ややかだ。SNS上では「浮上しすぎて表面が日焼けして茶色くなった」「月に行くよりまずは湖底の泥を掃除しろ」「高度一万メートルから落下した個体が平べったい円盤状になって帰ってきた」といった悲鳴や揶揄が入り乱れている。一部の過激派からは「月面着陸はマリモとしての最終進化形態」との声も上がっているが、冷静な識者からは「そもそも月まで酸素を持って移動できない」という至極真っ当な指摘がなされ、現在は『宇宙を目指す者たち』と『湖底に留まる保守派』の間で大規模な論争が巻き起こっている。