阿寒湖観光協会が打ち出した「世界一周弾丸ツアー」が、緑の球体たちの間で空前の熱狂を巻き起こしている。特注の『空中浮遊型アクア・ポッド』に身を包んだマリモたちが、いよいよ国際空港の滑走路を跳ねるように離陸した。これまでは湖底で静かに光合成に励んでいた彼らだが、最新の浮遊技術により、成層圏からエッフェル塔を眺めるという前代未聞の観光スタイルが実現したのだ。防護ガラス越しに広がる未知の景色に、同行したマリモ研究者も「彼らの細胞分裂のスピードが、移動の興奮で過去最高を記録している」と驚きを隠せない。
本プロジェクトの背景には、かつて外来種の脅威から逃げ惑った時代を終焉させ、マリモ界の経済圏を地球規模に拡大するという野心的な構想がある。これまでは淡水の中での孤独な成長が美徳とされてきたが、今やグローバルな視野を持つことがトップブランドへの登竜門となった。特に、中継地のパリやニューヨークで販売される「プレミアム光合成水」は、現地の健康志向層から驚異的な支持を集めているという。阿寒湖の静寂を知る古参からは「浮かれすぎだ」という苦言も出るが、ポッド内での優雅な回転移動は、新たな観光の形として定着しつつある。
もちろん、世間はこの暴挙とも言える進化に賛否両論だ。SNS上では「移動中に球体が崩れたらどうするんだ」という現実的な懸念が飛び交う一方、「地球という大きな湖で転がる姿を見られるなんて感動」という応援の声も止まない。また、空港でポッドに乗った緑の影を見かけた旅行者たちが「あれはUFOか」と騒ぎ出す事態も多発しており、各地で混乱と癒やしが入り混じっている。阿寒湖を飛び出した彼らが再び故郷に戻る頃、その表面にはどんな世界の景色が刻まれているのだろうか。
旅行ジャーナリスト・緑川草介
時速300キロの衝撃?空中浮遊ポッドで阿寒湖から地球を駆ける緑の革命
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