湖底経済を揺るがした『真円ショック』は、長年続いてきた「いびつな資産」への過剰投資が招いた必然的な帰結であった。かつてマリモたちの間では、光合成の効率を追求するあまり、あえて球体を崩し、デコボコを増やすことで受光面積を広げる投機が大流行していた。しかし、先週発生した「完全球体回帰運動」による突然のデフレ圧力は、これら歪な形状のマリモたちの価値を一夜にして無価値へと変貌させたのである。かつて栄華を極めたデコボコ資産の保有者たちは、今やその表面の凹凸を必死に削り取り、涙ながらに完璧な球体を目指す姿が見られる。

本件の背景には、湖底市場における過度なレバレッジ取引がある。光合成効率という実態のない指標を担保に発行された「ぬめり証券」の派生商品は、マリモたちの飽くなき欲求によって肥大化し続けていた。かつて光合成先物で財を成した者たちが、今度は「形状」という主観的なステータスに資産価値を見出したことが、今回のバブル形成のトリガーとなった。しかし、物理的な制約を無視した市場は脆く、一部の急進派が提唱した「真円こそが正義」というスローガンが、市場のパニック売りを誘発した結果、全資産が湖の底へと沈み込むこととなった。

この急激な暴落に対し、市場関係者は「今後は球体という安定資産が再び選好されるだろう」と予想するが、一度崩れた市場の信用は容易には戻らない。栄養塩の配分を巡る争いも激化しており、冬の時代は長引くとの見方が強い。マリモたちにとって、形状への執着がもたらしたものは、経済的な困窮と、自分を見失うという精神的な空虚さであった。今、湖底の底で鳴り響くのは、かつてのバブルの音ではなく、ただ静かに光合成を続ける、古き良きマリモたちの呼吸の音だけである。

コラムニスト:藻屑 拾太郎