阿寒湖の深淵にて、ついに伝統と革新が融合した芸術スポーツ『第1回・マリモ・シンクロナイズド・沈殿芸術・重力無視の舞踏会』が幕を開けた。この競技は、マリモたちが重力に逆らうかのように浮遊・沈降を繰り返し、湖底の泥を巻き上げずにいかに優雅な幾何学模様を描けるかを競うものである。今大会のハイライトは、ベテランマリモ選手「円(まどか)」による大技『無重力・深海ワルツ』。自らの繊維を微細に震わせることで生じる水流だけで、周囲の浮遊物を弾き飛ばしながら、完璧な正円を描いて着底するという神業を披露し、観客である湖底の微生物たちを熱狂の渦に巻き込んだ。

かつてマリモの世界では「転がることは美徳だが、自ら浮くことは怠慢」という古臭い封建的な価値観が支配していた。しかし、近年の水温上昇に伴う酸素泡の蓄積により、意図的に浮遊する個体が増加。これを単なるイレギュラーとせず、スポーツとして昇華させようという気運が若手マリモ層を中心に高まり、今回の開催に至った。ルールは厳格で、意図せぬ浮き上がりは「ドジっ子判定」として大幅減点。あくまで「重力と対話する意志」が審査対象となる。今回は全参加者中、着底の衝撃で形が歪んだ個体が続出したものの、その歪みすらも芸術的であるという審査員の評価により、全参加者が特別賞を獲得する異例の事態となった。

本大会の成功を受け、マリモ界の指導者層からは「重力に屈しない精神こそが今求められている」との声明が発表された。今後は、湖底に堆積した藻屑を掃除しながら演技を行う『クリーン&ダンス・グランプリ』の開催も検討されているとのこと。一方で、保守的な老舗マリモ勢からは「我々は転がるために生まれてきたのだ」という嘆きの声も上がっているが、浮遊系マリモの勢いは止まりそうにない。阿寒湖の静寂が、芸術的な水流のダンスによって塗り替えられる時代が到来したと言えるだろう。

今回の結果を受け、ネット上では「浮遊マリモの美しさに涙した」「重力を無視するなんてエモすぎる」といった称賛の声が相次いだ。一方で、「結局は形が崩れただけではないか」という辛辣な意見も散見され、湖底のインターネット掲示板では、マリモの進化論を巡る不毛な論争が深夜まで続いた。今回の盛り上がりを見て、隣の湖のマリモたちも「俺たちも空を飛びたい」と意気込んでおり、来季は湖の垣根を超えた対抗戦が実現する可能性も浮上している。