マリモ連邦政府は、昨日未明、長年連邦のアイデンティティとされてきた「能動的転がり」を制限する『静止維持法』を突如として施行した。これまでは湖底の傾斜に従い、優雅に回転しながら日光を全身に浴びるのがマリモの嗜みとされていたが、連邦中央委員会は「不規則な転がりはエネルギー効率を著しく低下させる」と主張。今後は、全土で「不動のまま日光を享受する姿勢」が義務付けられ、微動だにしないことが「愛国心の証明」と定義された。この強権的な法改正に対し、若手マリモ層からは「転がってこそ緑の連帯が生まれるのに」と、連邦各地で微細な振動を伴う抗議デモが発生している。
今回の背景には、近隣の藻類圏で流行している「完全固定式・光合成効率最適化モデル」への対抗措置があると見られている。マリモ連邦の伝統的な「転がる文化」は、美学的価値は高いものの、光を均等に当てるための手間が大きく、成長スピードで周辺藻類に遅れをとっていた。連邦上層部は「我々はもはや、ただ丸く転がるだけの観賞用球体ではない。沈黙の中で効率を極めるプロフェッショナルな藻体へ進化する」と語り、湖底の平坦化作業を急ピッチで進めている。しかし、生物学的な本能として「転がりたい」という衝動を抱える国民にとって、この法改正はアイデンティティの剥奪に等しい。
一方で、この決定に対してはマリモ社会の各層から複雑な反応が寄せられている。保守層からは「先祖代々、湖の波間に身を任せてきた誇りがある」との反対意見が根強いが、効率至上主義を掲げる科学局は「転がることで生まれる磨耗は、細胞分裂を無駄にするノイズに過ぎない」と一蹴した。実際に、この新法を遵守した実験用個体からは、従来の1.5倍の密度で細胞が詰まった「高密度型マリモ」の生存が確認されており、連邦はこの結果を盾に、全国的な「硬直化運動」を推進する構えだ。明日には全土の湖底で、重機を用いた強制的なアンカー設置工事が予定されている。
SNS上では「転がりたい、転がれない、でも生きたい」という葛藤を綴るハッシュタグがトレンド入りを果たし、混乱は湖底全域に広がっている。一部の過激なマリモたちは、禁止令を無視してあえて傾斜地へ転がり込む「ゲリラ的回転行脚」を敢行しており、連邦警備隊による「砂利での物理的防波堤」の設置が追い付いていない状況だ。丸い体を持ちながら動いてはならないという、矛盾に満ちた社会のルールは、この先マリモたちの柔軟な(しかし硬い)意志によって、どのような結末を迎えるのだろうか。平和なはずの湖底は、今、かつてない閉塞感と回転への渇望に包まれている。
マリモ連邦、全土で「寝返り禁止令」を施行――転がるアイデンティティの消失に国民から悲鳴
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転がりたいという情緒に流されるのは低レベルな個体のみ