阿寒湖の静寂が、藻類たちの咆哮で揺れた。恒例となっているスポーツの祭典だが、今回は趣向を変え、湖底の植生エリアを占拠する「マツモの森」を強行突破する、究極の格闘系球技『マツモ防衛線突破・超高速スピン・アタック選手権』が開催された。本競技のルールは至極単純、マリモたちが最大回転数で自らを砲弾のように射出し、絡みつくマツモの細枝を物理的に粉砕しながらゴールを目指すという、非常に荒々しいものだ。参加した選手たちは、日頃の光合成で蓄えたパワーを全て回転運動に変換。開始の合図と共に、湖底を覆い尽くす緑の密林へ向かって一斉に突撃を敢行した。幾重にも重なるマツモのトラップに足を、いや、体表を捉えられるたびに、選手たちは「繊維など知ったことか!」とばかりに逆回転で引きちぎり、火花が散るかのような摩擦熱を発生させた。観客席の岩場からは、激しい水流の渦巻きと共に歓声が上がり、泥を巻き上げる熱戦が繰り広げられた。

古来より、マリモにとってマツモは、成長を阻害する厄介な「絡まりの元凶」として忌み嫌われてきた。かつては優雅に湖底を転がるだけの存在だった彼らだが、近年は生存戦略の変化に伴い、自らの体表の摩擦力を利用した「高速スピン走行」が競技として確立。今回はその進化形として、障害物を弾き飛ばすという攻撃的スタイルが採用された。マツモ側も黙ってはおらず、枝を複雑に絡めて壁を作るなど、防御陣形を構築。しかし、マリモたちの加速力は計算を遥かに凌駕しており、マツモの防壁は藻屑となって湖中に散ることとなった。なお、競技終了後の湖底は、粉砕されたマツモの残骸が漂うシュールな光景となったが、主催者は「これはスポーツであり、決して環境破壊ではない」と強い声明を出している。

本大会の模様を報じた「湖底スポーツ週報」のSNSアカウントには、驚きと興奮の声が殺到した。特に、優勝したルーキー・M氏が、マツモの塊を時速50キロの超回転で突き破った瞬間、そのあまりの衝撃に周囲の小魚が失神したという伝説的なシーンは、瞬く間にミーム化。一部では「マツモの生態系を考慮すべきではないか」という慎重論も出たが、圧倒的多数のマリモたちは「あの緑の束を粉砕する快感は、光合成の何千倍も心地よい」と、スポーツの持つカタルシスに酔いしれている。次戦はさらに過酷な「逆流・流木障害物競走」が予定されており、藻類たちの限界突破への挑戦は止まることを知らないようだ。