湖底に戦慄が走った。これまで一方的な受難の対象であったマリモたちが、ついに天敵・水草「マツモ」に対し、真っ向勝負を挑む『第1回・マツモ・フラッグ・オブ・ザ・デッド』が開催されたのだ。本競技は、マツモの無数に伸びた茎が織りなす「緑の迷宮」のゴール地点に設置された、天然石の旗を奪取するという超過激なルール。これまで藻類界の平和主義者たちは、マツモに絡まり身動きが取れなくなる「窒息負け」を恐れてきたが、今回は猛者たちが集結。超高速回転で絡まりを物理的に弾き飛ばす「ドリル・ロール」や、水流の渦を発生させてマツモの根元を根こそぎ揺らす「竜巻突破」など、禁断の秘技が次々と炸裂した。特に優勝した個体が見せた、マツモの茎を逆に利用して自らをスイングさせる「ターザン転がり」は、審判団もスタンディング・オベーションを禁じ得ない芸術的な突破だった。

そもそもマツモは、水流に流されやすく、かつ粘着質な茎を持つため、マリモにとっては物理的にも精神的にも天敵とされてきた。かつては遭遇しただけで「藻類としての尊厳を失う」とまで言われたマツモだが、今大会によって「回避対象」から「攻略対象」へと歴史的なパラダイムシフトが起きたと言える。専門家は「マツモの密度を利用した高速パスの技術は、もはや生物学の範疇を超えたスポーツ科学だ」と分析している。なお、試合終了後には、選手たちの表面に付着したマツモの断片を綺麗に除去する「トリミング・フェスティバル」も同時開催され、両者の間で前代未聞の和解が進むかと思いきや、次の試合に向けたマツモ側の「成長加速」という宣戦布告により、緊張感は最高潮に達している。

世間の反応は二極化している。一部の保守的なマリモ層からは「美しく回転することこそがマリモの魂であり、棘のある植物に突っ込むなど正気の沙汰ではない」との批判も上がっているが、若手層からは「これまでの沈黙を破った革命」「マツモのトラウマを物理で克服する爽快感」と絶賛の嵐。湖底掲示板では「マツモの絡まりを逆手に取るのは神業」「今日のマツモの茎のしなり具合は五つ星だった」といったマニアックな専門用語が飛び交い、今や湖底全土がマツモ攻略法をめぐる狂騒に包まれている。次回の大会では、さらに強固な網を張るマツモ側に対し、どのような進化した突破口が見られるのか、湖底住民の注目は一点に集まっている。