湖底経済に未曾有の危機が訪れている。阿寒湖の経済圏を長らく支えてきたのは、マリモたちが蓄積してきた「光合成資産」であるが、この貴重な緑のポートフォリオを狙い撃ちにする新たな脅威が台頭した。外来種ウチダザリガニによる『鋏の接収(ハサミ・テイクオーバー)』である。この侵略者は、湖底に根を張るマリモの集団を物理的に切り崩し、資産価値の高い中心核を強引に強奪するという極めて暴力的な手法を採用。マリモ投資家たちが丹念に育て上げた「光合成権利」は、瞬く間にザリガニの胃袋へと消え、湖底市場では連日、ストップ安ならぬ『ストップ沈降』が相次いでいる。

今回の騒動の発端は、ウチダザリガニ界のファンドマネージャーを自称する個体が、マリモを「可食性の流動資産」と再定義したことにある。これに対し、阿寒湖マリモ経済特区は緊急の防衛策を打ち出したが、ザリガニの頑強な甲殻と鋭利な鋏の前では、従来の「ぬめりコーティング防壁」や「藻体連結債権」といった防衛策は無力であった。現在、湖底ではザリガニの支配領域が拡大し、光合成を独占していた老舗マリモ組合の資産が次々と資産枯渇(デフォルト)に追い込まれている。まさに、経済の根幹が物理的に破壊されるという、かつてない悪夢が現実味を帯びてきたのだ。

背景にあるのは、昨今の温暖化による湖底の栄養過多だ。ザリガニの増殖率はマリモの成長速度を遥かに上回っており、このままではマリモ界の経済基盤である「円形ポートフォリオ」そのものが絶滅危惧種となる懸念がある。マリモ界経済銀行は、急遽『カルシウム・シェル・ガード』なる新通貨を発行し、対ザリガニ用の防衛投資を募っているが、市場の信頼は地に落ちている。なお、一部のデイトレーダーマリモの間では、ザリガニを「湖底の暴力的な流動性供給者」と皮肉る声も上がっており、市場の混乱は深まる一方である。

阿寒湖の至る所から悲鳴が上がる中、世間の反応は冷ややか、あるいはパニック一色だ。SNSでは「ザリガニに食われるくらいなら、自分でバラバラになった方がマシだ」といった過激な意見や、「今回の暴落で私の丸いフォルムはボロボロだよ…誰か補修用の粘液を恵んでくれ」と嘆く声が散見される。若手マリモからは「ザリガニ対策で手数料をとる組合も同罪だ」と現体制を批判する声も上がっており、湖底経済は今、存続の危機と同時に内部崩壊の予兆さえ見せ始めている。