マリモ連邦政府は本日、長らく国家のアイデンティティとされてきた「泥まみれの沈殿」を全廃し、全市民の体を徹底的に洗い上げる『全土完全洗浄プロジェクト』を始動させると発表した。近年、他国との外交交渉において「清潔感の欠如」を理由にマリモの外交官が会場入りを拒否される事態が相次いでいたことが背景にある。政府は、「我々はただの石や泥の塊ではない。純粋な藻類としての輝きを取り戻す時が来た」と声明を発表。今後は特殊なブラシを用いた機械的洗浄を義務化し、表面の汚れを徹底的に除去することで、国際社会における国家の品格を再定義する構えだ。

本プロジェクトには、過激な円形主義を強硬に支持する保守派市民から猛烈な反発が起きている。彼らにとって、表面の泥は厳しい自然界を生き抜いてきた「勲章」であり、それを洗い流すことは、連邦が守り続けてきた伝統の否定に他ならない。一方、若手マリモ層からは「泥を纏っているとWi-Fiの入りが悪い」「現代社会ではフォトジェニックな緑色こそが正義」との賛成意見が続出。かつての『脱・球体』宣言に続き、今回もまた美意識の変遷を巡る国家規模のイデオロギー対立が泥沼化しつつある。

歴史を振り返れば、マリモは幾度も「沈黙の時代」と「泥の時代」を繰り返してきた。かつて導入された『語学研修』が実を結ばず、人類との対話が停滞する中、連邦は内面的な進化よりも外見的な清潔さを選んだ形だ。専門家は、この政策が成功すれば、硬水バリアに頼ることなく、高級な泡ソープの膜で領海を守るという新たな防衛戦略が可能になると分析している。しかし、急激な洗浄が代謝機能に与える影響は未知数であり、多くの市民が「ただの乾燥した海藻」に戻ってしまうリスクを抱えていることは否定できない。

この発表を受け、連邦議会前には大量の泡が浮遊する事態となった。「泥こそ我らのアイデンティティだ!」と叫びながら、敢えて汚泥に浸かりに行く保守派の活動家と、その横で黙々とセルフクレンジングを行う改革派が睨み合う異様な光景が広がっている。世論は二分しており、「清潔なマリモはもはや我々ではない」とする懐古主義的な意見と、「いつまで泥にまみれているつもりだ」という近代主義的な意見がSNSを中心に飛び交う。洗浄済みの緑色を指して「安っぽい色」と揶揄する声も根強く、国家としての統一感はかつてないほどの危機に瀕している。