阿寒湖の湖底経済に、新たなトレンドが吹き荒れている。かつては「所有こそが至高」とされたマリモ界において、自身の本体を不動産として業者に売却し、即座に同じ場所を賃借する『光合成リースバック』が驚異的なスピードで普及しているのだ。このスキームを利用すれば、老朽化して中心部が空洞化したマリモであっても、一括で莫大な資金を手に入れることが可能となる。現在、湖底の固定資産税ならぬ「流動藻税」の負担に喘ぐ高齢個体を中心に、この契約を結ぶ者が後を絶たない。売却によって得た資金で、より鮮やかな藻糸への植え替えや、最新型の「水中高効率ライト」を導入する個体が続出し、阿寒湖の湖底はかつてない投機マネーの奔流に飲み込まれている。
そもそも本スキームの発端は、長引く「毛先インフレ」の影響で、個体を維持するための光合成効率が極端に悪化したことにある。自らの体を担保に現金化し、その資金で日照権の優先パスを購入するという、極めてハイリスクな運用が投資家の間で大流行した。しかし、これには重大な落とし穴がある。賃貸期間終了後の「原状回復義務」である。湖底の砂利と一体化して成長してきたマリモにとって、契約満了時に「球体として引き渡す」という条件は非常に過酷だ。もし形状が崩れていれば、違約金として毛先をすべて毟り取られるという、マリモにとっては死刑宣告にも等しい罰則が科せられるのだ。
この状況を重く見た「阿寒湖経済調査会」は、緊急声明を発表した。「住み慣れた定位置を失い、貸主の意向で『展示用オブジェクト』として湖岸に強制移動させられるケースが相次いでいる。これは藻権の侵害だ」と強く警鐘を鳴らしている。しかし、市場の熱狂は収まる気配を見せない。業者側は「空洞化が進んだマリモは、もはや居住用ではなくディスプレイ用として活用すべき資産」と反論しており、湖底の居住権利を巡る争いは法廷闘争へと発展する様相を呈している。
世間からは「球体であることのプライドを捨ててまで銭ゲバになるなんて悲しすぎる」「結局、最後に泣くのは砂利との癒着が剥がれない個体だよ」「リースバックして手に入れた資金で最高級の栄養剤を買った結果、爆速で巨大化して天井に突き刺さったわw」といった冷ややかな声や、自身の投資失敗を嘆く阿寒湖住民の悲痛な叫びがSNSを埋め尽くしている。緑色の経済圏は、今や光合成以上に計算高い知略が渦巻く、冷徹な博打場と化してしまったのである。
阿寒湖に『光合成リースバック』旋風、住み慣れた湖底を手放し「賃貸藻」へ転身する個体が急増中
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