湖底で開催された伝統のフルマラソン『阿寒湖一周・藻の耐久レース』において、大会史上初となる衝撃の結末が記録された。優勝候補筆頭として大会記録更新が期待されていたベテランマリモ選手が、38キロ地点に設置された『栄養満点・極上ミジンコ入り苔むした給水所』のあまりの居心地の良さに、競技中にもかかわらずその場に腰を下ろし、そのまま数年単位の永住を決意したのだ。レース終盤、時速0.001ミリという驚異的な加速を見せていた同選手だが、ふと足元の苔の質感が「実家のような安心感」を醸し出していたらしく、観戦していた湖底住民からは「まさかのリタイアではなく、まさかの移住」との悲鳴が上がった。

本件の背景として、近年のマリモ界では競技の過酷化に伴い、栄養補給と休息を兼ねた『超・休息スポット』の質が向上しすぎている点が指摘されている。本来なら給水所は通過するだけの場所だが、今回設置されたスポットは「天然の岩盤浴」機能付きであり、長年の過酷な訓練で疲弊しきった選手の心を癒やすには十分すぎたようだ。大会運営側は「競技中、静止したまま光合成を始めて動かなくなった選手への対応は規定になく、審判団もどう裁定すべきか困惑している」とコメント。現在、当該選手は給水所の主として地元の藻たちと茶会を開いており、復帰の予定は全く立っていないという。

このニュースを受け、湖底社会は真っ二つに分かれている。「プロとして失格」と厳しく断罪する層がいる一方で、「あまりのストレス社会に、ひとつの答えを出した英雄である」と称える若手マリモも急増している。また、この『定住事件』をきっかけに、一部のファンからは「いっそ給水所をゴールに設定すれば、平和なレースになるのではないか」という本末転倒な改革案も飛び出している。湖底のネット掲示板では、件の給水所周辺の不動産価値が爆上がりしており、もはやマラソン大会というよりは『理想の移住先決定戦』に近い様相を呈しているようだ。