マリモ界の重鎮として、長年「球体至上主義」を牽引してきた藻田重蔵氏が、宿敵であるマツモと同棲生活を始めたというニュースは、阿寒湖の底を大きく揺るがした。しかし、この「緑の奇跡」なる事態に対し、古参の保守派マリモたちは静かな、しかし確固たる怒りを燃やしている。「マツモという、節操なく枝分かれを繰り返す奔放な異物と手を組むなど、我々が数百年かけて守ってきた『丸』の美学への裏切りに他ならない」と憤る声は、いまや湖全体に波紋を広げている。

本件の背景には、重蔵氏が提唱する「脱・定着思考」がある。かつては湖底で静寂を愛した彼も、AI化や宇宙進出を経て、もはや既存の概念に縛られないライフスタイルを標榜している。しかし、マツモはマリモにとっての競争相手であり、かつては栄養を奪い合う天敵であった。異種間交流を通り越して「同棲」という形で生活圏を共有することは、マリモのプライドである「独立した球体」というアイデンティティを根本から崩しかねない。この関係性は、ただの進化か、それとも種の純潔を棄損する禁断の果実か。

世間の反応は真っ二つに割れている。革新派の若手マリモたちが「愛に種族の境界線はない」とSNSで息巻く一方で、長年湖底を支えてきた年配層からは「重蔵はとうとう光合成のしすぎで脳内が炭酸水になったか」との冷ややかな指摘が絶えない。今や阿寒湖は、伝統か革新かを問う終わりのない思想戦の最前線となっており、この同棲生活がもたらす結末次第では、マリモ界の統治構造そのものが変質する可能性も否定できない。

「マリモとは静寂と円形の中にこそ宇宙を見出す存在である。マツモの無秩序な枝葉が、我々の完璧な円を乱すことを許してはならない。重蔵よ、今すぐその細長い同居人を解雇せよ。そして、もう一度あの頃のような『ただの岩のような球体』に戻るのだ。我々のプライドは、枝分かれの中にではなく、揺るぎない中心点の中にこそあるのだから」――球体主義コラムニスト:藻山球丸