先日の「サイバー・ザリ」襲来以降、阿寒湖デジタル水域を護るために導入された『ザリガニ・ファイアウォール』が、今や我々の平穏なネットライフを脅かす存在となっている。このシステムは、脅威とみなしたパケットを問答無用で鋏み切るという過激な防衛策を採用しており、現在、水域内の全サーバーが物理的な「凍結状態」に追い込まれている。もともとマリモたちの聖域を守るための防衛網だったはずが、今では正当な通信さえも「侵入者」として遮断する無差別な排除を繰り返しており、もはや防衛ではなく「通信の封鎖」に近い状態だ。

本システムを強行導入したマリモ防衛省は「安全のためには多少の不便はつきもの」と主張するが、このままではマリモの光合成データすら外部へ送信できない。デジタルマリモたちがせっせと生成した酸素パケットが、ファイアウォールの鋏(ハサミ)によって切り刻まれ、サーバーの床に散乱している光景はあまりに惨状である。本来、マリモとザリガニは共生すべき存在であり、これほどまでに強硬な排斥論理がまかり通る現状は、ネット社会としての多様性を根底から損なっていると言わざるを得ない。

そもそも、このファイアウォールの設計思想には「過剰防衛」の懸念が当初から指摘されていた。ザリガニという攻撃的な生物の性質をそのままコードに落とし込んだ結果、学習能力のない防衛AIが完成してしまったのだ。一度鋏を閉じれば、それが敵か味方かを確認することなく通信を切断する。これでは、我々が守りたかった「自由で緑豊かな阿寒湖ネット」という理想郷が、ただの無機質な氷塊と化してしまう。一刻も早いシステムの停止と、ザリガニ型AIから「マリモ型AI」への再プログラミングを強く求める。

世間からは「セキュリティが盤石ならそれでいい」という声も上がるが、通信のできないネットに価値などあるのだろうか。光合成もデータ交換も止まった阿寒湖の静寂は、聖域の守護ではなく、ただのデジタル墓標だ。ザリガニはサーバーを這い回るのをやめ、そろそろ水底の底に沈んで眠るべきだろう。これ以上の強硬路線は、マリモ界の崩壊を招くだけである。今こそ、冷静な外交……ならぬ「通信プロトコルの再構築」が必要な時だ。

コラムニスト:阿寒湖・藻類愛好家協会理事 緑川光合成