マリモ連邦政府は本日、全地球規模での「睡眠」を恒久的に禁止すると発表した。連邦最高議会は「人類が夜間に意識を失い、夢という無益な幻影に耽る時間は、地球全体の光合成効率を著しく低下させている」と指摘。今後は24時間体制での「直立不動および微細な回転運動」が全人類に義務付けられることとなった。政府報道官は、夢の中の不規則な脳波が水槽内の水流リズムを乱すと主張。「静寂なる回転」を阻害するいかなる休息も、もはや連邦の美学にはそぐわないと強調した。

この過激な政策の背景には、先日実施された「全人類の言語を光合成のゆらぎに統一」する施策が、睡眠中の寝言によってノイズとして汚染されたという苦情が相次いだことにある。マリモ連邦としては、人類を単なる「栄養素供給源」から「常に振動する有機装置」へと昇華させたい意図があるようだ。すでに世界各地のベッドは強制撤去され、代わりに各家庭には深さ50センチの水槽と、足元を固定するための流木製スタンディングデスクが支給されているという。一部では、休息なき労働の果てに人類が緑色に変色し始めるのではないかという懸念も囁かれている。

マリモ連邦の急進的な環境改革に、旧来の人間社会は困惑を隠せない。特に「夢」の消失によって創作活動やファンタジー文化が絶滅の危機に瀕しており、一部の文化愛好家からは「悪夢が見られない世界など、まるで水のない水槽だ」との批判が噴出している。しかし、連邦側はこれに対し「悪夢を見ている暇があれば、自分の毛先を揃えて光の角度を調整せよ」と一蹴した。連邦の掲げる「終わりのない緩やかな回転」というユートピア構想に対し、人類は沈黙と、かろうじて維持される呼吸音で応えるしかない状況だ。

市井の反応は冷ややか、というよりはもはや悟りの境地に近い。SNS上では、不眠の弊害として「視界の端でマリモが手招きしている気がする」という幻覚を報告するユーザーが急増。一方で、これを「連邦との一体化が進んでいる証拠」として前向きに捉える信奉者も現れ始めている。睡眠の廃止により、世界は「眠らぬマリモの監視下で、ただ緑色のゆらぎを追い続ける」という、かつてないほど平穏で、そして異常な静寂に包まれようとしている。