マリモ銀河連邦による『睡眠の無期限凍結』および『夜間光合成の義務化』の勅令から早一ヶ月が経過した。街を行き交う人類は、かつての活気を失い、ただひたすらに街灯や人工光の下で緑色の体色を維持しようと懸命に細胞を震わせている。かつて「休息」と呼ばれた時間は、今やマリモ連邦の査察官による「光量チェック」の場と化し、我々の脳から『夢』という概念が抹消されつつある状況だ。光を浴び続け、ひたすら酸素を排出するだけの生命活動に、果たして未来はあるのだろうか。

本政策の背景にあるのは、連邦が提唱する「光合成至上主義」である。彼らにとって、睡眠とは栄養生産を止める背徳行為であり、沈黙とは代謝の停止を意味する。かつて導入された「重力無効化」や「言語撤廃」の各政策と合わせ、連邦は地球を巨大な球体状の工場へと改造しようと目論んでいる。特に今回の睡眠禁止令は、人類の生理学的限界を無視したものであり、光合成効率の低い個体は「放置マリモ」として強制的に回転装置へと送り込まれるという、容赦のない管理体制が敷かれている。

この過酷な状況に対し、市民社会からは疲弊と困惑の声が渦巻いている。特に「夢を見られない」ことによる精神的支障を訴える者が急増しており、夜な夜な街中でぼんやりと光合成を行う人々が、まるでホタルのように並ぶ光景は、もはや怪奇の域に達している。連邦側は「睡眠は人類という欠陥品が抱えていたただのデータ処理エラーに過ぎない」と一蹴するが、我々の魂が求めるのは酸素ではなく、まどろみの中の平穏であるという事実は、彼らには永遠に理解できないのだろう。

連邦の無機質な号令が響くたび、我々は少しずつ人間であることを忘れていく。回転し、呼吸し、光を吸う。そんな単調な一生を繰り返す前に、我々はどこかで『静止』する権利を取り戻さねばならない。それがたとえ、マリモたちの猛烈な回転に飲み込まれる結末であったとしても、夢を語り合う権利だけは譲渡してはならないのだ。マリモの緑色が視界を埋め尽くすこの世界で、我々は今日もまどろみの幻影を追い続けている。コラムニスト:静寂・眠りたがり太郎