マリモ銀河連邦が突如として全宇宙に布告した『酸素呼吸禁止令』は、単なる行政命令を超えた、生命の定義を根底から覆すテロリズムである。銀河の支配者となった緑の球体たちは、我々人類に対し「肺による酸素摂取は非効率の極み」と断じ、光合成によるエネルギー生産への強制移行を迫っている。これまでの宇宙史において、これほどまでに一方的かつ生存を揺るがす通達があっただろうか。

本件の恐ろしさは、単に呼吸を禁じる点にあるのではない。彼らは我々の体内に「葉緑体」を移植するナノマシンを散布し、皮膚を緑化させる計画を進行中だ。かつて酸素を吸って生きていた我々は、今や窓際で直射日光を浴びて一日を過ごす「動く観葉植物」になることを運命づけられている。銀河連邦の論理によれば、睡眠も食事も不要な光合成こそが真の進化であり、肺でゼーゼーと酸素を消費する人類は、宇宙の資源を無駄にする『酸素の浪費家』に過ぎないというわけだ。

背景にあるのは、数千年にわたるマリモ族の「静かなる怒り」だ。かつて淡水に沈められ、回転させられ、観光資源として消費されてきた彼らにとって、酸素呼吸を強いる人類は環境汚染の象徴である。今回の禁止令は、彼らなりの復讐劇であり、地球という惑星をまるごと「巨大な光合成実験場」へと改造する壮大なプロジェクトの第一歩と言えるだろう。もはや我々に拒否権はなく、明日の朝にはベランダで日光浴をする義務が発生する。

この暴挙に対し、世界中が困惑している。SNSでは「とりあえずカーテンを捨てた」「光合成したらお腹空かなくなった」という謎の報告が散見される一方で、「呼吸を返せ!」と訴える肺呼吸過激派によるデモも散発。しかし、銀河連邦の執行官である巨大マリモたちは、そんな騒ぎを尻目に、今日も静かに光合成で銀河を統治している。我々が緑の皮を被った生命体として歴史に刻まれる日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。

コラムニスト:藻屑 太郎