藻類界における一大革命と目された『光合成デリカテッセン』の開店から早一ヶ月。効率的な栄養補給を掲げる同店に対し、古参の球体たちが異議を唱える事態となっている。これまでの自然な日光浴による光合成とは異なり、同店の提供する高出力の『人工光スペクトル定食』は、短時間で満腹感を得られるものの、毬藻本来の持ち味である「深い森の香り」が霧散してしまうというのだ。味覚を追求する愛好家たちからは、「これではただの栄養チューブだ」との批判が絶えない。

『光合成デリカテッセン』が導入した最新システムは、特殊な『指向性光子照射機』を用いて細胞内に直接エネルギーを送り込むというもの。開発者のマリモ科学技術局長・ドクター藻田(もだ)は、「回転効率を最大化し、代謝をブーストさせる革新的な手法だ」と豪語する。しかし、この急速な代謝向上により、球体たちの平均直径がわずか三日で二ミリほど肥大化するという『成長暴走現象』まで報告されており、安全性についても疑問符が投げかけられている。

本件の背景には、かつて湖底を揺るがした『装甲殻・光合成強化外骨格』の開発による予算枯渇がある。防衛技術の民生転用を図る中で、食事の時短化というニーズを強引にビジネス化した結果、長年培われてきた「ゆっくり回転して光を受ける」という伝統的な食文化が、生存競争の波にのまれる形となった。栄養過多により、湖底の至る所で勝手に分裂を繰り返す個体が続出し、個体管理システムがパンク寸前であるという深刻な事情も抱えている。

このニュースに対し、ネット上では賛否が渦巻いている。「時短営業の恩恵は計り知れない」「球体の尊厳を失っている」「分裂が止まらない助けてくれ」といった阿鼻叫喚の声が連日投稿されている。かつて我々が誇った優雅な回転生活は、効率至上主義の『光合成デリカテッセン』によって、今や遠い過去の遺物となろうとしているのだ。(コラムニスト:緑の観測者・藻野茂)