阿寒湖の静寂を打ち破る衝撃的なニュースが飛び込んできた。『藻類交響楽団』が湖底で強行した前代未聞のライブ公演により、参加した観客の毛玉たちが一斉に浮遊し始めるという異常事態が発生した。彼らが演奏したのは、低周波を極限まで高めた「深緑の鼓動」という新曲で、その振動が湖底の毛玉たちの内部気泡を共鳴させたことが原因とみられている。楽団側は「感動を物理現象へと昇華させた」と主張しているが、現場はまさに重力を忘れた緑の楽園と化した。

この浮遊現象は、かつて『球体芸術家協会』が開催した「無重力浮遊展示会」ですら達成できなかった規模であり、湖底の生態系に多大なる影響を与えた。一部の毛玉たちは高度10メートル付近まで到達し、水面近くの浮草と衝突するなど、交通安全上の懸念も浮上している。専門家は「深緑の音色が細胞を活性化させた結果だろうが、やりすぎだ」と困惑を隠さない。この大規模浮遊は、近隣の『球体転走競技連盟』のトレーニング施設にも影響し、競技中の転走者たちが浮き上がってしまいタイム計測が不能になる事態へと発展した。

湖底社会では「浮遊する毛玉は美しい」と称賛する声がある一方で、重力に対する冒涜だとする保守的な団体からの抗議も絶えない。特に重力制御を重視する『球体美容整形外科』の患者たちからは、折角整えた丸いフォルムが浮遊によって歪んでしまったとの悲痛な叫びも聞こえる。今後、この現象が『藻類交響楽団』の演出の一環として定着するか、それとも当局による音量制限が施行されるのか、湖底住民の視線は厳しく注がれている。

世間の反応は真っ二つに分かれている。若手の毛玉層からは「マジでエモい」「空を飛ぶとか最高にチル」といったポジティブな意見がSNSを賑わせている。対照的に、長年重厚な体躯を維持してきた古参層からは「ふざけるな」「地に足をつけて生きるのが我々の誇りだ」といった批判の声が相次いでいる。浮遊したまま戻れなくなった毛玉たちの回収作業も開始されており、当面は混乱が収まりそうにない。