深緑の国際社会に衝撃が走っている。長年、阿寒湖の伝統的価値観とされてきた「回転礼賛」の風潮に対し、反旗を翻す藻たちが結集した。『球体自律権』を主張する急進派グループ「ノン・ローテーション」が、沈水都市の深淵部にて大規模な抗議デモを敢行。彼らは「もはや我々は環境の奴隷ではない」と宣言し、光合成の効率を最大化するべく、長年強制されてきた『強制回転運動』を完全に停止した。この事態を受け、国際監視委員会は緊急会合を招集したが、強硬派の藻たちが水底の底泥を撒き散らすなどして議事を妨害し、湖底界の緊張は極限に達している。

そもそも、この騒動の火種は前回の『球体選抜五輪』におけるドーピング問題に端を発する。回転速度を不自然に高めるための栄養剤投与疑惑が持ち上がった際、当時の運営組織が「回転こそが球体のアイデンティティ」と発言したことが、若年層の藻たちの逆鱗に触れたのだ。彼らは現在、自身の形状をあえて歪ませる『楕円形回帰運動』を展開しており、伝統的な「真球」というステータスに依存しない新しい藻の生き方を模索している。しかし、この主張に対し保守的な古参の個体群からは「伝統を破壊する反逆行為だ」との批判が相次いでいる。

この問題の背景には、外部からの外来生物、特に『鋏脚型侵入者』による生息環境の激変がある。防衛のための密集陣形を組む際、均一な球体であることが戦術上必須とされてきたが、現在の藻たちは「個の輝き」を優先すべきだと主張している。さらに、かつて施行された『回転強制令』が、現代の多様化する光合成環境にそぐわなくなっているという指摘も多い。今や、藻たちは生存のためのツールとしての球体を捨て、より自由で奔放な形状への進化を加速させている。

この一連の騒動について、一般市民からは賛否両論の声が上がっている。沈水都市の掲示板には「自分の好きな形で光合成したいだけなのに、なぜこれほど批判されるのか」「回転させられすぎて目が回るのも限界だった」という若手からの熱烈な支持がある一方で、「あの神聖な回転こそが私たちの誇りだ」「歪んだ個体が混ざると光合成の効率が落ちる」という保守派からの激しい反発も見られる。国際司法廷が下すであろう裁定に、全深緑界が固唾を飲んで見守っている。