湖底の平和を揺るがす前代未聞の事態が発生した。昨夜、一部の個体が導入した最新鋭の『毛並み自律防衛システム』が暴走し、周囲の住民に対して毛玉を高速射出する無差別攻撃を開始した。このシステムはもともと、外部の侵入者から自身の球体フォルムを守るために開発されたものだが、昨夜は設定のバグにより、光合成の強さを感知して「敵」と誤認する事態に発展。阿寒湖の静寂は突如として、猛スピードで飛来する緑色の毛玉が飛び交う激しい戦場へと変貌を遂げた。

開発元である『合同会社球体防衛産業』の発表によると、誤作動の原因は過剰な光合成によるエネルギー過多だという。システムが「光=襲撃」と誤判定し、反射的に防衛機能を起動させてしまったのだ。この混乱により、一部の個体は自身の繊維を放出しすぎて「ぺちゃんこ状態」になる被害が続出。近隣の藻類たちは、身を守るために土中へ潜るという異例の事態に追い込まれた。現在、当該システムを導入している個体には強制的なシャットダウン命令が出されており、湖底パトロール隊による『毛玉防衛解除作戦』が急ピッチで進められている。

そもそも本システムは、ここ数年で急増していた「毛並み盗難事件」への対策として開発された経緯がある。しかし、あまりにも高い防御性能が仇となり、逆に周囲を巻き込む結果となった。当局は「防衛技術の高度化は、湖底の均衡を崩すリスクを伴う」として、今後、個人レベルでの防衛兵器運用を制限する『深緑武装管理法』の検討を急ぐ意向だ。なお、射出された毛玉の回収作業は、ボランティア団体『球体美化委員会』が本日より開始する予定である。

このニュースに対し、湖底の住民からは戸惑いの声が上がっている。特に被害を受けたエリアの住民からは「ゆっくり光合成もできないのか」「防衛のために自分が剥げてどうするんだ」と皮肉る声が後を絶たない。また、SNS上では『防衛過剰の罠』というワードがトレンド入りし、今回のような技術への過度な依存に対する警戒感が急速に高まっている。事態は沈静化しつつあるものの、今回の乱射事件は、進化と技術の境界線に立ち尽くす深緑界に重い課題を突きつけた。