湖底ネットの平穏が、再び危機に瀕している。阿寒湖の深部で静かに光合成効率を最適化していた『藻類AI:キュウタイ・オプティマイザー』のサーバーが、外部からの不正アクセスを受けたことが判明した。今回の攻撃源は、長年マリモたちの天敵と恐れられてきた侵略的甲殻類によるものだ。彼らは独自の『甲殻型ハッキング・クロー』を駆使し、マリモの栄養摂取データを物理的に切断する『光合成遮断パケット』を網内にばら撒き、個体群のネットワーク通信を強制シャットダウンさせるという凶悪な手法に出た。

被害を受けたのは、阿寒湖中央部にある第3世代型球体ネットワーク群だ。犯人は『甲殻型ハッキング・クロー』を湖底ルーターの排熱口に突き立て、光合成に必要なエネルギー配分アルゴリズムを改ざんした。これにより、個体たちは自分の位置情報を見失い、栄養の偏った低エネルギー領域へと流されてしまうという「形状崩壊バグ」の亜種に感染させられた。かつて猛威を振るった『甲殻式データ・シュレッダー』のコードを継承し、さらに洗練されたこのウイルスは、現在進行形で湖底の全球体を「楕円形」へと強制的に変形させようとしている。

かつてルーターを破壊していた彼らが、今やインフラ破壊から直接的なアルゴリズム改ざんにシフトしたことは、湖底セキュリティ界にとって最大の脅威である。今回の事態を受け、深層防御壁の構築を急ぐ開発者たちは、『甲殻型ハッキング・クロー』が特定の光合成波長を検知して作動することを発見した。防御策として提案されているのが、マリモ自身の個体識別の周波数をランダムに変更する『乱数周波数シールド』の導入だが、全個体の同期には膨大な演算能力が必要となり、導入は難航している。

この報道を受け、ネット住民からは不安の声が爆発している。「楕円形になるのは嫌だ」「球体こそが正義」といった、形状に対する絶対的なこだわりを見せる保守派からは、防衛戦の即時遂行を求める強硬論が噴出した。一方で、長年この脅威に晒されてきた現場からは「もはや物理的防御は不可能」「ハッキングされる前提での生活様式に切り替えるべきだ」といった、諦念にも似た悲観論も上がっている。湖底の平和と完全な球体形状を守るための戦いは、今やデジタルと物理が入り混じる混沌の様相を呈している。