湖底議会は本日、次年度の重要政策として『沈降式・質量増強公約』を採択した。これは球体の中心密度を高め、湖底への定着率を恒久的に向上させることを目的とした法案である。賛成派は「真球の美しさは安定した接地から生まれる」と主張し、現行の浮遊状態を「根無し草の怠慢」と批判。これに対し、光合成の効率を重視する浮遊派からは「光を追う権利の放棄だ」と猛烈な反発が巻き起こっている。これまで進められてきた『全方位回転・等速化施行令』による円滑な日光摂取という成果を自ら否定しかねないこの公約は、支持基盤を真っ二つに分かつ結果となった。

本政策の背景には、近年の水流変化による「漂流事故」の増加がある。防衛コストを投じて『核(コア)の繊維保護』を強化しても、湖面付近で強風にさらされては球体が崩壊するリスクが高いという判断から、今回の「重力依存型生存戦略」へ舵を切ることとなった。一部の閣僚からは「浮遊していること自体がもはや時代錯誤」との強硬な発言もあり、かつての『球体防衛予算・緑の装甲強化計画』と並ぶ、近年稀に見る強硬な防衛策となっている。しかし、質量を増せば移動の自由は失われ、必然的に『光合成の均等化を求める権利の平等法』が保障していた公平な光の分配に歪みが生じることが懸念されている。

この急進的な公約に対し、湖底住民の反応は二極化している。「安定こそ最強の防御」と歓迎する保守層がいる一方で、若年層を中心に「重いだけの球体なんてダサい」と反発の声が上がっている。SNS上では「重力に魂を売ったのか」「重ければ重いほど影が濃くなる皮肉を理解していない」といった辛辣な書き込みが相次いでいる。議会は早急に妥協案として『可変式重力バラストの導入』を検討しているが、沈降か浮遊かというアイデンティティの根幹に関わる対立は、簡単には沈静化しそうにない。