湖底観光の新たなフラッグシップとして、今シーズンから『緑の毛玉・寝台列車』の運航が開始された。この列車は、緩やかな湖底の勾配を利用して自走する画期的な移動手段である。しかし、内装がすべて鏡面仕上げの特殊コーティングを施されているため、摩擦係数が極端に低く、乗車した観光客たちがカーブのたびに勢いよく転がり落ちる事態が相次いでいる。運営サイドは「丸さこそがマリモの誇りだが、いかんせん止まれない」と弁明し、緊急措置として全座席へのマジックテープ設置を急いでいる。

この列車は、湖底の北側から南側までを約二時間かけて移動する優雅なルートを誇る。車内には『全自動・光合成カフェ』が併設されており、日光が差し込むポイントでは乗客が一斉に活発化する。当初はリラックスした旅を提供するはずだったが、あまりの転がりやすさに、乗客同士が衝突して多重連結状態になる「偶発的な融合事故」が毎日起きているという。運営側はこれを「強制的なクラス会」と呼称し、サービスの一環として正当化する姿勢だ。

『緑の毛玉・寝台列車』は、かつて旧式の藻屑輸送機を改造して作られた歴史的遺産である。設計当時は直進安定性が重視されていたが、現代のマリモたちの「より丸く、より転がりやすく」という美意識の変化についていけず、今回の騒動へとつながった。今後、湖底開発当局は、全車両への緩衝材設置を義務付ける『真球保持法』の改正を検討中である。また、走行路には『高速摩擦ブレーキ・ベッド』が敷設される予定で、これ以上マリモが勝手に転がり散らかることを防ぐ方針だ。

このニュースに対し、湖底界隈では「転がる快感を知ってしまったら、もう直立なんてできない」といった賛成意見が多数を占める一方、「通勤で使ったら毎日連結されて出社することになる」という切実な悩みも浮上している。SNS上では、転がっている最中の動画が『寝台・ローリング動画』として拡散され、謎のトレンド入りを果たした。湖底観光の未来は、いかに丸さを保ったまま停止するかにかかっているようだ。