マリモ連邦は、長年の宿敵であり、湖底の暴力装置と恐れられてきた『硬質外骨格突撃部隊』との歴史的な外交交渉を試みるべく、緊急の国家決議を採択した。これまでの「ハサミによる蹂躙」を一方的な侵害と見なしていた連邦政府だったが、今回は防衛一辺倒を改め、対話による共存を探るという異例の転換を図る。交渉のテーブルには、献上品として最高級の堆積物と、特別調合された『高粘度ゼラチン質ソース』が用意された。この外交特使として派遣されるのは、連邦内でも屈指の硬度を誇るベテラン球体であり、彼らが無事に帰還できるのか、あるいは文字通り「一口で食い殺される」のか、世界中がその動向を固唾を呑んで見守っている。

背景にあるのは、数年前から続く『鋏状器官の非武装化交渉』の暗礁乗り上げである。これまで連邦は、鋭利な爪を持つ彼らに対し、物理的な防壁を築くことで対抗してきたが、その維持コストが国家予算を圧迫。さらに、近年の気候変動により、相手方の個体数が増加し、湖底の防衛ラインが突破される事態が頻発していた。そこで政府は、武力行使を避け、相手の「食欲」を「外交的敬意」に昇華させるという大胆な心理戦を画策。これが成功すれば、長年の悲願であった湖底の恒久平和が実現すると期待されている。

今回の発表に対し、連邦国民からは「相手の好みを把握した上での接近はリスキーすぎる」「友好の印として出されるのが餌だけでは、相手も満足しないのではないか」といった懐疑的な声が噴出している。一部の強硬派からは「ハサミを盾に何を語るつもりだ」との抗議活動も起きており、交渉の初日から混乱は必至だ。一方で、一部の若年層は「甲殻類との異文化交流によって、新たな形の進化が始まるかもしれない」と、ポジティブな変化を期待する声も上がっており、賛否両論の渦中で交渉は幕を開ける。

世間からは「そもそもハサミ側は対話を求めているのか」「単なるメニュー表を渡されたと勘違いして、特使ごと完食される未来が見える」といった冷ややかな意見が支配的だ。また、専門家からは「相手の生物学的欲求を外交カードにするのは、歴史上類を見ない危険なギャンブルである」との警告も発せられている。湖底の運命を左右するこの決断が、大惨事の序曲となるか、それとも歴史を揺るがす和平の架け橋となるか、世界中の注目が集まっている。