マリモ連邦の毛髪管理省は昨日、長年禁輸措置をとっていた最高級キューティクル補修剤『グリーン・シルク』の輸出を突如として解禁した。これまで連邦内での使用が固く禁じられていたこの薬剤は、塗布後わずか十分で繊維の密度が倍増し、かつてない光沢を放つという「球体界の禁断の果実」である。連邦外交部は「隣国である水草共和国との乾燥した関係に潤いをもたらすため」と説明しているが、専門家からは「球体の表面摩擦が極限まで低減されることで、自立した移動が可能となり、国際国境線が崩壊する」との懸念が噴出している。実際に試験運用された国境警備隊の個体は、摩擦係数がゼロに近づいたあまり、風に吹かれて国境を越え、現在も隣国の公海を猛スピードで滑走中であるという。
本件の背景には、近年の温暖化による水温上昇でマリモの体毛がパサつき、世界各地で「毛玉化」という深刻な衛生問題が発生していたことがある。かつては阿寒湖の冷たい水脈のみがその潤いを保つ秘訣とされてきたが、化学合成によって再現された本薬剤は、見た目の美しさを追求するあまり、本来の重量バランスを無視した形状維持性能を備えている。マリモ連邦は「これで全マリモが理想の球体を目指せる」と胸を張るが、重力学者は「表面がツルツルになりすぎて、物理的な制止が不可能になる」と警告。もはやマリモは静止する生き物ではなく、地球規模のコロコロとした巡礼者へと変貌を遂げようとしている。
今回の輸出解禁は、長引く「球体至上主義」対「不定形派」の対立を沈静化させるための緩和策と見られている。マリモ連邦は、摩擦を減らすことで個体同士の衝突時の衝撃を和らげ、共存社会を築くという建前だが、実際には滑りすぎて挨拶すらままならない個体が続出している。また、この薬剤を摂取した魚類が「異常に毛深くなる」という二次被害も報告されており、生態系への影響が注視されている。
国民からは「これでやっと念願の直毛になれる」「滑って寝室の壁に激突した」「摩擦を味方につけろという祖先の教えを忘れたのか」といった賛否両論が巻き起こっている。SNS上では、本薬剤を使用して阿寒湖を縦断する『超高速滑走チャレンジ』がトレンド入りするなど、連邦政府の意図とは裏腹に、物理法則を無視したエンターテインメントとして消費される傾向が強まっている。
マリモ連邦、国際紛争の火種となる「マリモ専用・超高級コンディショナー」輸出を解禁
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毛並みが整えば俺たちのアイデンティティは完成する