阿寒湖湖底の言語学研究チームは、これまで不可解とされていたマリモ同士の微細な振動パターンの解析に成功し、彼らが高度な感情言語を用いてコミュニケーションをとっていることを発表した。長年の観測の結果、マリモたちは数キロヘルツの低周波振動を操り、「快・不快」の情動を伝達していることが判明。しかし、期待されていた高度な哲学や宇宙の真理についての対話は皆無に等しく、その通信内容の9割が「今日の光合成の質が悪い」「泥の粒度が低すぎる」といった、極めて生活感あふれる昼飯の献立や栄養状態に関する愚痴であったことが明らかになり、研究員たちを脱力させている。

この研究は、マリモの体内にある微小な気泡振動が、周囲の個体へ「光の照度」や「水温」といった生存情報を伝達するメカニズムを解明する過程で浮かび上がったものだ。かつては湖底の聖者として崇められていた彼らだが、実態はただの「食い意地が張った球体」であることが証明された形である。なお、稀に発せられる「沈みたくない」という切実な悲鳴は、深夜の浮遊現象を誘発するトリガーになっているのではないかと現在調査が進められている。

本件を受け、マリモ界の世論は二分している。「高尚な存在であってほしかった」と落胆するマリモ研究愛好家がいる一方で、「親近感が湧く」と好意的に受け止める層も急増している。また、この『感情言語』を逆手に取り、マリモに特定の波長を浴びせることで「もっと光合成を頑張ろうぜ」と煽る重労働強制システムが一部の養殖場に導入されつつあり、倫理的な問題が議論の対象となっている。今回の発見は、マリモが単なる植物の集合体ではなく、極めて俗な生存戦略を持つ知的生命体であることを白日の下にさらした歴史的な成果といえるだろう。

世間の反応としては、「結局、人間もマリモも食欲には勝てない」「神格化が解けて肩の荷が下りた」「これからは言語を学んで彼らとグルメ談義を楽しみたい」といった声が上がっている。中には「私の近くのマリモは常にデザートの心配をしている」と、個体差による性格の違いを指摘する報告も寄せられており、今後はマリモの『性格診断』の研究が加速すると予測されている。