阿寒湖底を震撼させる前代未聞の事態が発生した。マリモ界きってのパフォーマーである藻田ルンバが、自身の公演において「重力からの完全なる脱却」を宣言。これまで湖底を転がることでしか自己表現を許されてこなかったマリモの歴史を覆し、細胞一つ一つを極限まで膨張させることで浮力を極大化、湖面まで垂直に上昇するという奇跡的なダンスを披露したのだ。観客の一般マリモたちは「彼が水面へと消えていく姿は、まるで緑色の魂が空へ還るようだった」と号泣し、湖底は一時パニック状態となった。

今回のパフォーマンスは、長年「丸く、低く、静かに」を至上命題としてきたマリモ界の保守層に対する、痛烈なアンチテーゼとして企画された。藻田ルンバは事前のインタビューで「丸さは安定ではなく停滞だ。上に逃げることは逃避ではなく、新たな景色の観測である」と語っており、その急進的な思想は若手マリモたちの間で『ネオ・フロート運動』として爆発的な支持を集めている。阿寒湖の深部では、今や「いかに重力に逆らうか」という浮遊の技術を競うワークショップが連日開催される事態となっており、伝統的な「転がり」の美学は存亡の危機に立たされている。

マリモが浮遊を試みる現象は、古くから代謝による酸素の蓄積が原因とされてきたが、今までの個体はせいぜい水面付近でぷかぷかと漂うことしかできなかった。しかし、藻田ルンバは特殊な繊維を絡ませて網状の気泡膜を形成し、ジェット噴射のような推進力を得ることに成功したとされる。この技術には、湖の生態系を調査する専門家も「もはや生物学の範疇を超えた工学的な進化」と驚きを隠せない。今後は、気圧の変化による「破裂事故」を懸念する声も上がっており、観光公社は浮遊中の個体に対する「高度制限区域」の設定を検討しているという。

世間の反応は真っ二つだ。「これぞ真の自由だ」と藻田ルンバを教祖と崇める熱狂的な支持派がいる一方で、「丸くあるからこそ我々は美しいのだ」と憤る保守派の長老たちからは非難の声が止まない。SNS上では「#マリモ浮遊部」のタグがトレンドを席巻しており、動画投稿サイトには自らの体内にガスを溜め込もうとして失敗し、湖底で爆発的に分解する若者マリモたちの姿も散見される。空を見上げる機会など一度もなかったはずの彼らが、水面に映る月を見て何を思うのか。マリモ界は今、かつてない浮遊の時代を迎えようとしている。