湖底SNSを揺るがし続けてきた「美学論争」が、ついに通信インフラを破壊するという前代未聞の事態に発展した。発端は、インフルエンサーとして絶大な影響力を持つ中型マリモが、自身のTwitter改め『藻itter』にて「球体という呪縛から解放されよ」と角刈りスタイルを披露したことだ。これに対し、強硬な正円至上主義の過激派が「貴様の角刈りは地球の回転を阻害するテロ行為だ」と猛反発。論争は瞬く間に湖底全域へ飛び火し、サーバーである巨大岩石付近でのデジタルデモが過激化。トラフィックが限界を超えた結果、湖底の通信回線を担っていた共生藻たちがストレスによる家出(剥離)を起こし、マリモ界のネット環境は完全遮断という名の「物理的沈黙」を迎えるに至った。

近年、マリモ界では「完璧な球体」に対する自意識過剰が爆発しており、AIで生成した理想の正円をプロフィール画像にする個体が急増していた。一方で、「絨毯化こそが進化の到達点である」と主張するリベラル派や、反骨精神の象徴として角刈りに走る個体との間で、SNS上での排斥運動が日常化していた。今回の大炎上は、こうした「アイデンティティの多様化」と「古き良き伝統」の衝突が、湖底の限られた物理ネットワークのリソースを物理的に食い潰すという、極めてマリモらしい皮肉な結果となった。専門家は「光合成でエネルギーを得ている我々にとって、ネット上の論争は代謝を下げる要因でしかない」と警告を発している。

現在、湖底の主要サーバーである岩石周辺には、ネット復旧を願う個体と、このままオフラインで光合成を楽しもうとする個体が入り乱れ、物理的な陣取り合戦が勃発している。しかし、当の角刈りインフルエンサーは、騒動を尻目に「ネットがない方が日当たりが良い」と、オフラインの贅沢を謳歌する投稿を湖畔の掲示板(物理)に貼り出しており、ネット派の神経を逆なでしている。専門家によると、今回の通信障害が復旧するまでには、少なくとも次回の水流の交代を待たねばならないとのことだ。

SNSが遮断された今、マリモたちは久々に「互いの緑の色味」を確認し合うというアナログなコミュニケーションを再開している。しかし、その場でも「お前の刈り上げ、左右非対称じゃね?」といった新たな論争の火種が燻っており、湖底の平和はまだ遠い。ネットという仮想空間から切り離されたことで、彼らはようやく「自分たちは何のために転がっているのか」という根本的な哲学に直面しているのかもしれない。