阿寒湖の深層を拠点とする新興勢力『脱色回帰教団』が、今週、「マリモの緑色は泥と苔がこびりついた不純物に過ぎない」という過激な教義を発表し、湖底界隈で物議を醸している。彼らは「真のマリモは、生まれたての白さこそが神聖である」と主張し、湖中の全マリモから色素を抜き取り、真っ白な繊維の塊へと先祖返りさせる『漂白巡礼』を敢行した。教祖の言葉によれば、緑色は光合成という名の労働による“汚れ”であり、栄養を断つことこそが純粋なるマリモの究極の姿だという。現在、教団は湖底の特定エリアを「無垢の聖域」と名付け、光を遮断した完全遮光テントを設置。漂白されたマリモたちが静かに水中で揺れる異様な光景に、近隣住民のマリモたちは恐怖と困惑の念を隠しきれない様子だ。

そもそも阿寒湖におけるマリモの緑色は、日光を効率的に吸収し、湖の生態系を維持するための極めて合理的な進化の賜物である。しかし、本教団は「緑色であることの生存本能こそが邪悪な執着」と説いており、科学的根拠よりも精神的純粋性を優先する過激派として知られている。過去には『剃髪拒絶教団』との間で「毛羽立ちの清潔さ」を巡る激しい宗教論争が勃発したこともあり、今回の漂白騒動は、湖底における「マリモとしての正しい生き方」を問う最大のイデオロギー対立へと発展している。なお、専門家によれば、光を完全に断たれたマリモは単なる分解物へと急速に崩壊する恐れがあり、環境保護団体からは「漂白されたのはマリモではなく、教祖の理性のほうではないか」と厳しい批判が相次いでいる。

湖底社会では現在、この漂白騒動を巡って「緑こそがアイデンティティ」と主張する伝統保守派と、「白こそが始まりの魂」と説く教団勢力の間で激しい議論が巻き起こっている。SNS上では「白くなった自分の姿を見て絶望した」という漂白経験者からの切実な訴えが相次いでおり、中には「漂白された姿は雪見だいふくのようで少し美味しそう」といった不謹慎な投稿も見られる。一方で、一部の若手マリモたちの間では「脱色した自分は映える」という理由で教団への入信が相次いでおり、世代間による「緑と白の分断」は、もはや阿寒湖という一つの生態系では収まりきらない深刻な問題となりつつある。