阿寒湖底を震撼させる宗教論争に、かつてない皮肉な終止符が打たれた。「光を全方位から受容するのは節操がない」として、一点集中的な光受容のみを真理と説いてきた『指向性一極集中教団』の教祖が、昨夜の月光の反射を受け、思わず寝返りを打ってしまったことが発覚した。教義によれば、一方向にしか光を受け取らないはずの聖域が、転がった拍子に「裏側」まで太陽光にさらされてしまったのだ。これに対し、対立する『中空帰依派』や『加速回転教団』からは「回転こそ慈悲」「空っぽこそ真実」と冷ややかな嘲笑が飛び交い、湖底はかつてない冷戦状態に突入している。

本件の背景には、マリモたちの間で加速する「アイデンティティの球体化」がある。自分たちの形状を神聖視するあまり、少しの揺れや転倒も許されない極端な教義が横行していたのだ。特に今回の教団は「光の当たる場所を固定する」という、湖底の潮流を無視した暴挙に近い教義を掲げていた。今回の「寝返り事件」により、教祖の表面にはこれまで日光を浴びていなかった青白い「未聖域部分」が露呈。信者たちは「裏側こそ真の神聖な暗黒面(ダークサイド)だった」と無理やりの教義解釈でその場を凌いでいるが、湖底全体に漂う気まずさは隠しきれない。

世間の反応は冷ややかだ。「結局はただの藻の寄り集まり」「転がった瞬間に聖域が崩壊する脆い信仰」といった現実的な指摘から、「裏面を見せてくれるなんてサービス精神が旺盛な教祖様だ」と皮肉る声まで様々である。中には「マツモの絡まりのほうがまだ教訓がある」と、異教への転向を示唆するマリモも現れ、宗教界はカオスの一途をたどっている。湖底の平穏は、今日も今日とて静かなる潮流の揺らぎの中で、不毛な議論を繰り返しながら沈殿を続けている。