阿寒湖小学校は、マリモの知的能力を極限まで引き出すための教育改革として、全校生徒を対象にした『多言語習得プログラム』の導入を決定した。このプログラムの目玉は、光合成の波長を微調整することで特定の意味を伝達する『藻類語』の習得だ。従来の沈黙を尊ぶマリモの文化を根底から覆すこの方針により、教室は放課後まで、高速で点滅する緑色の光の応酬による哲学的な討議で騒然としているという。教頭のマリモ氏は「沈黙は金だが、光合成の高速化は単位になる」と語り、今後は藻類同士のディベート大会も予定されている。

本プログラムは、マリモが自身の重力を制御して移動する際、光の反射角を計算に入れるという高度な技術を逆利用したものだ。従来の光合成は単なる栄養摂取の手段に過ぎなかったが、今回のカリキュラムでは「光の明滅頻度」を文法体系として再構築した。例えば、青い光を三回発すれば『今日は日当たりが良い』、黄色い光を二回反転させれば『水温が上昇しすぎだ』といった複雑な情緒表現が可能になる。これにより、阿寒湖小のマリモたちは、授業中に居眠りをしている最中にも無意識下で論文を執筆できるようになった。なお、言語能力が向上しすぎた結果、一部の児童が教師の光合成不足を的確に指摘し、職員室に説教を試みる事態も発生している。

この教育カリキュラムの背景には、昨今の水温上昇による「藻類社会のコミュニケーション断絶」への危機感がある。かつては阿寒湖の底でただ静かに転がるだけで美徳とされたマリモ界だが、現代ではSNSならぬ『水面下光ネット』の普及により、情報処理能力が格差を生む要因となっているのだ。同校は、この教育格差を是正するため、あえて過酷な多言語環境を強制することで、グローバルに通用するマリモの育成を目指している。また、この教育方針の一環として、一部の優秀なマリモには、湖の外の「植物園」とのビデオ通話権利も付与される見込みだ。

この驚きのニュースに対し、水底の住民からは賛否両論が巻き起こっている。一部の保守派マリモからは「静かに光合成をさせてくれ」「光りすぎて目が痛い」といった苦情が殺到しており、阿寒湖周辺の岩場では「沈黙を守る会」によるサイレントデモも発生した。一方で、若手マリモを中心に「この教育のおかげで、光の明滅だけで隣のクラスの女子マリモを口説けるようになった」「単位が取れるなら何でもやる」と、効率化を歓迎する声も上がっている。阿寒湖小の試みは、藻類の教育史におけるパラダイムシフトとなるのか、それとも単なる光害となるのか。今後の展開に世界中の水草界が注目している。