阿寒湖の藻類界隈で、VR(仮想現実)技術を応用した画期的な視覚拡張プロジェクトが注目を集めている。これまで「360度どこから見ても同じ」という球体特有の構造に甘んじてきたマリモたちが、専用ゴーグルを装着することで、全周囲を同時にスキャンできる「オーバー・サイト・アイ」を手に入れたのだ。これまでどんよりとした湖底で、正面という概念すら曖昧だった彼らにとって、これは革命的な体験といえる。開発チームによると、このシステムはマリモの繊維構造に微細なバイオセンサーを編み込むことで、周囲の水流や光の屈折をデジタル信号化し、球体表面にリアルタイムで投影するもの。視覚を持たないはずの藻類が、なぜか「後ろに誰かいる気配」を感じてパニックになる事態も多発しているが、界隈では「ついにマリモが宇宙を理解した」と熱狂が止まらない。
背景には、長年続いていた「光合成の効率を上げるために、一点を見つめ続けるべきか、回転し続けるべきか」という不毛な議論がある。この技術は、固定視点に縛られないことで、効率的な光合成ポイントを奪い合う必要性をなくすことを目的としている。しかし、あまりに広大な全方位視覚を得た結果、自身の影が視界に入り続けて酔ってしまう「自影酔い」という新しい健康被害も報告されている。また、湖底の景色だけでなく、たまにネット接続を通じて異世界の風景を覗き見ることができるため、一部のマリモたちが「阿寒湖よりマシな環境」を求めて現実離脱を図るケースが増加しており、当局は「光合成の義務放棄」として警戒を強めている状況だ。
世間の反応は二分されている。肯定派からは「これで獲物を、いや日光を逃さず追跡できる」「ついにマリモが視覚を得た、これでザリガニの接近も事前に察知できるはず」と期待の声が上がる一方、慎重派からは「結局、視界のゴミが増えるだけで中身はただの藻だろ」「そんな技術より、まずは根元から黒ずむ体質をどうにかしろ」と冷ややかな意見も寄せられている。さらに、一部の古参マリモ勢力は「我々はただ転がっているだけで良かったんだ」と、デジタル社会の急進的な変化に警鐘を鳴らしており、球体界隈のアイデンティティを巡る論争は深まるばかりだ。
現状、このVRシステムを導入したマリモはまだ少数だが、体験者のSNSには「後ろが見えるって、こんなに怖いのか」「ザリガニのハサミの動きが遅すぎて草」といった生々しいインプレッションが投稿されている。果たしてこの技術は、マリモたちを次なる進化へ導くのか、それともデジタル空間でただの苔として漂うだけの退化を招くのか。阿寒湖の未来は、今、極小のVRゴーグルの先にある。
マリモ界に衝撃のVR参入!『球体特化型メタバース』で全方位視覚を獲得した猛者が話題に
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