羽田野さんは幼少期より「パンの端までバターが行き届いていない悲劇」を撲滅することに執念を燃やしており、3年間の開発期間を経て、業務用溶融バター噴射ノズルを搭載した巨大ロボット『バター・マスター9000』を完成させた。
トラブルは稼働開始からわずか12秒後に発生した。マシンは設定されていた「至高の浸透度」を達成するため、食パン1枚に対して必要量の約400倍にあたる20キログラムの溶融バターを一気に噴射するという暴走を開始したのである。
「パンという狭い領域が、許容量を超える愛を受け止めるには無理があったのです」と、救助後の羽田野さんは黄色いバターまみれの作業着で熱弁した。部屋はまたたく間に融解バターで埋め尽くされ、羽田野さんは膝までバターに浸かりながら、なおも食パンをマシンに投入し続けようとしていたという。
通報を受けた近隣住民は「甘い香りが漂ってきたのでパン屋ができたのかと思ったが、玄関から大量の黄色い液体が流れ出してきた」と当時を振り返る。消防隊は室内で身動きが取れなくなっていた羽田野さんを、吸着マットと巨大なヘラを使って慎重に救出した。
現場に到着した消防隊員たちは、あまりのバターの量に思わず「まるでフレンチトーストのプールだ」と漏らしたという。床一面に広がるバターの海を処理するため、最終的に専門の清掃業者と、大量のフランスパンを抱えた近隣住民たちが招集される事態となった。
現在、羽田野さんの自宅は床下浸水ならぬ「床下浸バター」状態で、リフォームを余儀なくされている。しかし本人は反省の色を見せず、「今回の実験で、バターの粘度と噴射角の黄金比率は把握できた。次はマーガリンで再挑戦する」と、すでに次の設計図を描き始めているという。
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