田村氏が開発したのは、パンをセットすると瞬時にトーストし、その直後に高圧ガスでジャムやバターを『発射』する装置である。彼はこれを『ジャム・ア・ジェット』と命名し、朝の準備を0.5秒で完結させることを目指していた。
実験当日、田村氏は自信満々で食パンを装置にセットした。しかし、マシンの出力設定を誤って『台風クラス』にしてしまったことがすべての始まりだった。スイッチを押した瞬間、轟音と共にマシンのノズルが激しく振動し、高粘度のイチゴジャムが弾丸のような速度で射出された。
キッチンは一瞬にして甘酸っぱい霧に包まれ、壁も天井も、そしてリビングにいた田村氏自身も、まるでジャムの海で溺れたような姿となった。ジャムを塗るどころか、もはやキッチン全体が巨大な菓子パンの内側のような状態である。
「弾道計算は完璧だったはずなのですが、パンの耳が少し硬かったせいでジャムが跳ね返り、そのまま天井に直撃しました」と、顔中をジャムまみれにしながら田村氏は冷静に分析を語った。
駆けつけた近隣住民たちは、窓から漏れ出す強烈なイチゴの香りに驚愕し、最初は何かの産業事故かと勘違いしたという。しかし、現場を見た彼らは、あまりのシュールな光景に怒るどころか、その場でパンを差し出し「余ったジャムを塗ってほしい」と頼む始末となった。
田村氏は現在、この失敗を『高粘度液体のアート的散布』としてポジティブに捉えており、近日中に『チョコソース散弾砲』の開発に着手すると宣言している。彼にとって、朝の忙しさはもはやパンを焼くことではなく、いかにしてキッチンを汚さずに食事ができるかという、新たな戦いへと昇華されたようだ。
なお、部屋の掃除が終わったのは事件発生から3日後。現在も湿気が高くなると、家のどこからか微かな甘い香りが漂い、住人を空腹にさせるという謎の副作用に田村氏は悩まされている。
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