自称・食パン防衛隊長の大川健三郎さん(54)は、朝食の準備中に「焼きたての食パンは網の上で微妙に位置をずらしている」と主張し、これをパンの逃走行為であると断定した。大川さんは自宅ガレージを秘密工場に変え、数ヶ月の沈黙の末、ついに「トースト・インポッシブル・チェイサー」を完成させた。
この装置は、センサーがパンのわずかな膨らみを検知すると、上空から巨大なアームが時速80キロで急降下し、パンを網ごとプレスする仕組みになっている。大川さんは開発の動機について「パンは焼けると香ばしくなる。香ばしいということは、何かに抗おうとする意思の現れだ。私はその意思を物理的に封じ込めたかった」と熱弁を振るった。
完成記念の初実演では、近隣住民や地元のパン愛好家が招かれた。大川さんが「食パン、覚悟!」と叫ぶと、トースターからパンが顔を出した。センサーが反応し、待機していた捕獲アームが猛烈な勢いで作動。会場には「バンッ!」という凄まじい衝撃音とともに、パンが粉々に砕け散る乾いた音が響き渡った。
アームの威力があまりに強すぎたため、網は変形し、トースター本体も粉砕され、パンは数ミリの粉塵となって会場に降り注いだ。現場の空気は、焼きたての香ばしい匂いと、少しの焦げたプラスチックの臭いで満たされた。大川さんは粉塵にまみれた顔で「……見てください。一切逃げていない。完璧な勝利だ」と宣言した。
観客からは、パンの跡形もなくなった惨状に対して、最初は呆気にとられる沈黙が続いたが、大川さんが粉砕されたパンを必死にスプーンでかき集め、「今日はパン・スープにして楽しむ」と語ったことで、会場は爆笑の渦に包まれた。
大川さんは現在、パンの再結晶化技術の研究に着手しており、「次は粉々になっても、自動的に食パンの形に復元する『レゴ・パン』を作る」と意気込んでいるが、家族からは「次は網戸を直すのにお金を使ってほしい」と冷静に釘を刺されている。
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