大山氏は長年、納豆ごはんの粘り気に魅了され、その糸一本一本に異なる音階が宿っていることを突き止めたと主張する。「最初はただの偶然だと思いました。しかし、発酵時間と混ぜる回数を極限まで調整することで、ドレミファソラシドが奏でられることに気づいたのです」と、大山氏は真剣な眼差しで語る。
オーケストラの練習風景は異様そのものだ。大山氏は特製の防音ガラス容器に納豆を入れ、超精密なロボットアームで糸を引き伸ばし、そこにわずかな風を送ることで「ネバネバ・シンフォニー」を奏でる。練習には膨大な量の納豆が必要で、彼の自宅は常に濃厚な発酵食品の香りに包まれているという。
驚くべきことに、その演奏を聴いた近隣住民からは「確かに、どこか切ない旋律が聞こえる」「食欲がそそられると同時に、なぜか泣けてくる」といった困惑交じりの称賛が相次いでいる。この現象を大山氏は『発酵共鳴』と名付け、独自の音楽理論を構築し始めた。
当初は冷ややかな目で見ていた音楽関係者も、そのあまりの滑稽さと真剣さの対比に、ついにコンサート開催を支援することを決断。会場には、におい防止のための巨大な空気清浄機が50台並べられ、観客には全員、予備の白米が配布されるという前代未聞の事態となった。
そして迎えた初公演。大山氏は燕尾服を身に纏い、指揮棒の代わりに箸を手に登場した。静まり返る会場で、ロボットアームが奏でる「糸の旋律」が響き渡った瞬間、悲劇は起きた。あまりの粘着力に弦(糸)が絡まり合い、楽器全体が巨大な納豆の塊へと変貌してしまったのだ。
ステージ上に散乱する糸まみれの納豆を前に、大山氏は即座に箸を執り、優雅に一口食べた。「……今、この瞬間の音が一番美味しい」と彼は恍惚の表情を浮かべた。拍手喝采の中、コンサートは終了した。現在、次回公演の予定はないが、大山氏は「次はキムチで打楽器に挑戦したい」と意気込んでいる。
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