食の探求家である羽田野健太氏(42)は、このほど「即席麺は湯気を通すと味気ない」という持論のもと、完全に外気を遮断した密閉容器内での調理法を確立した。氏によれば、湯気は旨味を空中に放散させる「蒸気の逃亡者」であり、これを封じ込めることこそが究極の味への道であるという。

実験装置は、氏が自作した強化アクリル製の巨大なグローブボックスである。この中で、即席麺を熱湯とともに封じ込め、外部と一切のガス交換を遮断したまま調理を進行させる。羽田野氏は特殊な保護服に身を包み、ボックス内に手を突っ込んで、まるで宇宙飛行士が船外活動をするような慎重さで箸を操る。

この手法の最大の特徴は、食べた瞬間に全ての風味を一度に脳へ直撃させる点にある。麺が口に入るまでの間に香りが逃げないため、一口目のインパクトは「まるで旨味の爆弾を口内で爆破させたような衝撃」と表現される。羽田野氏は「これまでのラーメン体験は、いわば旨味の漏水事故のようなものだ」と力説する。

しかし、この実験には重大な問題も発生していた。密閉空間であるため、熱湯によって容器内の圧力が急上昇し、箸を動かすだけで容器が激しく揺れ、時には中のスープが「真空竜巻」となって羽田野氏の顔面を襲うのである。先日の公開実験では、麺をすくい上げた瞬間に容器がわずかに変形し、スープが霧状に噴出して氏の保護服を真っ黄色に染め上げた。

それでも羽田野氏は屈しない。「多少の火傷とスープの飛沫は、味への対価としては安すぎる」と語る氏の目は、すでに次なる段階を見据えている。今後は、さらに気圧を上げることで、麺の分子構造を変化させ、噛まなくても溶ける「液体即席麺」の開発を目指すという。

なお、完成した極上の麺を食べるため、現在羽田野氏は専用の「吸気用ヘルメット」を装着して食事を行っている。しかし、ヘルメット内部に麺を投入する際にどうしても湯気が漏れ入ってしまうため、結局は「最も湯気の香る状況」で麺をすすっているという事実に、本人はまだ気づいていない。