羽田野さんはこの日、自作の耐熱性強化ガラスに特殊な集光レンズを取り付けた装置を手に、高度3000メートルからのスカイダイビングに挑んだ。彼の目的は、落下中のわずか数分間に太陽光を一点に集中させ、空中で完璧な半熟目玉焼きを完成させるという、極めて野心的なプロジェクトである。

「地上で焼くのとはわけが違う。天空の神々が焼いたような、至高の味わいになるはずだ」と出発前に語っていた羽田野さん。彼が背中に背負った巨大なパラシュートと卵焼き機が連結されたその姿は、まるで未来から来たドジな精鋭部隊のようであった。

しかし、開始直後に予想外の事態が発生した。集光装置が機能した瞬間、雲の隙間から差し込んだ強烈な太陽光が、卵ではなく羽田野さんの愛用のゴーグルに直撃。視界を遮られた羽田野さんは、パニック状態で空中で激しく旋回する羽目になった。

高速回転する羽田野さんの手元から、卵は遠心力によって美しい放物線を描きながら四方八方へと飛び散った。それはまるで、空中で黄色い花火が打ち上がったかのような幻想的な光景であったが、当の本人は目玉焼きを食べるどころか、自身が鳥の餌やりマシーンと化していることに気づいていなかった。

地上で待機していた観測チームは「羽田野さんの周囲に、奇跡的なまでに均等に卵が散布されている」と困惑。落下地点付近の牧場には、突然空から降り注いだ卵によって、牛たちが困惑しながらも朝食を摂るというシュールな一幕が展開された。

着陸後、ヘロヘロになりながらパラシュートを片付けた羽田野さんは、自身のゴーグルの焦げ跡を見つめながら静かにこう呟いた。「今回の失敗は、卵の温度管理ではなく、俺自身の耐熱性が足りなかったことだ。次回は全裸で挑むしかない」。

現在、現地では「空から落ちてきた卵で焼かれた牛」として、牧場の牧草の一部が密かなグルメスポットになりつつあるという。羽田野さんは次の挑戦に向けて、すでに宇宙ステーションへの直訴状を書き始めている。