羽田野氏によれば、このプロジェクトのきっかけは朝食時のふとした疑問だった。「納豆を混ぜれば混ぜるほど、糸は強固になる。ならば、この粘り気を極限まで高めれば、鉄筋コンクリートをも凌駕する素材になるのではないか」という仮説が、彼の人生を狂わせた。
建設現場となった彼のワンルームマンションは、現在、強烈な発酵臭と、縦横無尽に張り巡らされた「納豆の糸」によって、足を踏み入れることさえ困難な状態となっている。壁や天井には、乾燥してカチカチに硬化した糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされており、もはや現代アートの域を超えた異様な景観を呈している。
構造体の強度は驚くべきものだ。羽田野氏は誇らしげに、完成した「納豆タワー」の頂上に消しゴムを置くデモンストレーションを行った。「見てください、微塵も揺れません。この糸の張力計算には、最新の流体力学ではなく、あえて『混ぜる回数』というアナログな数値を採用しました」と自信満々に語る。
しかし、この計画には深刻な問題も浮上している。建築資材の調達にあたり、羽田野氏は近隣のスーパーから「納豆の購入を制限させてほしい」と懇願された。また、高湿度になるとタワーが「再発酵」し始め、構造が軟化して崩落の危険があるという欠陥も指摘されている。
それでも羽田野氏は諦めていない。今後は、さらに粘り気の強い「極小粒納豆」と「大粒納豆」を混合するハイブリッド構造を採用し、東京タワーのミニチュアを建設する計画だという。なお、現在のタワーは昨夜、近所の猫が匂いにつられて飛び込んだことで、無残にも半壊している。
最後に羽田野氏は、「失敗は成功の母。しかし、今の私にとっての母は、このタワーを撤去しに来る大家さんです」と語り、タワーの残骸をスプーンですくいながら、幸せそうに口へ運んでいった。
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