羽田野氏が開発したのは、ベルトコンベアに乗ったトーストに対し、高速で回転するアームがジャムを均一に塗りたくるという夢のマシンでした。試作一号機は、ボタン一つで朝食が完成するはずでしたが、スイッチを入れた瞬間から雲行きが怪しくなりました。
マシンの設計上のミスにより、ジャムを塗る勢いが想定の約500倍に設定されていたことが原因でした。起動直後、マシンは勢いよくジャム入りのボトルを空中に射出し、部屋中に甘いベリーの雨を降らせたのです。
さらに事態を悪化させたのは、トーストをキャッチするはずの「ソフト・ランディング機構」の暴走でした。高速回転するアームは食パンをテニスラケットのように捉えると、そのままリビングの壁に向かって全力でスマッシュを打ち込みました。
「焼きたてのパンが音速を超えて壁に埋まる姿を見たのは初めてだ」と羽田野氏は語ります。幸いにも負傷者はいませんでしたが、壁には完璧な形でジャムが塗りたくられた食パンが、一枚の現代アートのように突き刺さっていました。
羽田野氏は現在、この装置を『壁面装飾用アート自動生成機』として再定義しようと試みていますが、近隣住民からは「朝から壁を叩くような音がするのをやめてほしい」と切実な苦情が寄せられています。彼は次に、パンを自動で温め直す装置の開発を検討しているそうですが、もはや誰もそのスイッチを入れる勇気はありません。
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