事務用品メーカーに勤める羽田野健一さん(34)は、先月より自宅にてある極秘プロジェクトを進めていました。それは、小学生時代に誰もが一度は夢見た「消しゴムのカスを練り固めて、最強の消しゴムを作る」という試みです。
羽田野さんは、デスクワークで発生する消しゴムのカスを毎日丁寧に回収し、専用の密閉容器に保管し続けました。さらに強度を増すために、高級な練り消しゴムの成分を配合するなど、独自のハイテク製法を導入したといいます。
「最初は砂遊び感覚でした。しかし、カスが溜まるにつれ、これは芸術であり、人類の叡智であると確信したんです」と、羽田野さんは真剣な眼差しで語ります。その情熱は凄まじく、数週間の間、夕食を抜いてでもカスの選別と圧縮作業に没頭しました。
プロジェクト開始から1ヶ月、ついに彼は野球ボール大の「究極の消しゴム」を完成させました。表面にはうっすらと鉛筆の芯の黒ずみが層を成し、年輪のように輝いています。羽田野さんはこれを持って、長年放置していた未完成のデッサン帳に向かいました。
しかし、悲劇は直後に訪れました。自信満々に紙の上をこすった瞬間、その物体は消しゴムの役割を果たすどころか、紙全体を鈍い灰色に染め上げ、さらに悪臭を放つ「ただの崩れやすい土の塊」へと変貌したのです。
羽田野さんは崩れ落ちる塊を見つめながら、「消すために生まれてきたはずが、汚すことでしか存在を証明できなかった」と力なく語りました。現在、その物体はリビングのテーブルの上に放置されており、家族からは「粗大ゴミの回収日まで触るな」と厳重注意を受けているとのことです。
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