羽田野さんはこれまで、トーストの端から端まで均一にバターを塗ることに人生の情熱を捧げてきた人物だ。彼は「従来のナイフによる塗布は、人間の情緒に左右されすぎてムラが出る」と指摘。自作の機械『バター・ザ・ワールド号』は、高圧コンプレッサーと加熱式噴射ノズルを搭載し、食パンを時速120キロで通過させながらバターを霧状に定着させるという、極めて壮大な仕様となっている。
事件が発生したのは今朝7時のこと。羽田野さんが試運転のスイッチを入れると、機械は暴走。トーストを射出するはずのノズルが逆方向を向いたまま高出力で稼働し、リビング全体を猛烈な勢いで液体バターの霧で満たした。室内の気温は瞬く間に上昇し、壁紙も家具も、そして羽田野さん自身も、黄金色のバターでコーティングされる事態となった。
「最初は焦りました。しかし、次第にこの黄金色に輝く空間を見ていたら、不思議と『これが私の求めていた朝食の景色かもしれない』という悟りを開いてしまったのです」と、羽田野さんはバターまみれの玄関先で語った。駆けつけた消防隊員も、現場のあまりの滑りやすさに直立不能となり、救助活動は『いかに転ばずに室外へ脱出するか』という競技に近い様相を呈したという。
近隣住民からは、「最初は香ばしくていい匂いだなと思っていたが、洗濯物が全部バターの匂いになった」「近所の猫が全員、妙に毛並みが良くなって戻ってきた」といった困惑の声が上がっている。現在、自治体は羽田野さんに対し、速やかなバターの回収と、周囲のパン屋への謝罪を求めている。
今回の騒動について、羽田野さんは反省の弁を述べる一方で、懲りてはいない様子だ。「次回はバターではなく、ジャムで同様の実験を行う予定です。ただし今度は、屋外の広い敷地で、防護服を着て実施することにします」と、新たな野望を語った。彼の戦いは、まだ始まったばかりのようである。
なお、事件直後にたまたま通りかかった近所の住民が、こぼれたバターの上で焼きたての食パンを拾い上げ、「これ、すごく美味しいわね」とコメントしたことが、事態をさらにシュールなものにしている。
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