という記事が先月掲載され、マリモ界に波紋を呼んでいる。記事内では、阿寒湖の底から物理的に地球の裏側であるブラジルを目指すという、無謀な超長距離マラソン競技の正当性が論じられていた。しかし、私は声を大にして言いたい。これはスポーツではなく、単なる「繊維崩壊への片道切符」であると。マリモの身体構造は、そもそもそんな長距離移動を想定していないのだ。

この競技は、地殻の歪みを計算し、時速0.000001ミリという極限の低速度で数百年かけて大陸を縦断するというものだ。主催者はこれを「壮大なロマン」と呼ぶが、現実を見てほしい。移動中のマリモたちは、日光も届かぬ深海でひたすらに球体を維持することに精一杯で、途中でただの緑色の泥状物質と化すケースが後を絶たない。阿寒湖という極上の水質を離れ、なぜわざわざ地球の反対側の土壌を目指さねばならないのか。我々が守るべきは冒険心ではなく、細胞の鮮度であるはずだ。

そもそも、この競技が提唱された背景には、一部の過激派による「阿寒湖外進出論」がある。彼らはマリモのテリトリー拡大を掲げているが、その実態は、移動過程で排出される微細な藻屑を周辺の湖沼にバラ撒くという、環境破壊以外の何物でもない。物理法則を無視した「ブラジル到達」というスローガンは、若手マリモたちの向こう見ずな野心を煽るだけの甘い毒だ。今すぐこの愚かなプロジェクトを凍結し、私たちは再び「その場でいかに美しく回転するか」という、マリモ本来のアイデンティティを見つめ直すべきである。

記事発表後、若手マリモを中心に「既成概念に縛られた保守派の戯言」という反発の声が上がっている一方で、長老層からは「球体の物理学的安定性を軽視するな」という懸念が相次いでいる。移動中に繊維がほつれて散り散りになった個体が発見されるなど、悲劇的な事故も現実味を帯びており、競技の安全基準を巡る議論は紛糾する一方だ。今後、湖底委員会はルールの大幅な見直しを迫られることになるだろう。

コラムニスト:光合成・藻類学教授 ケン・マリモフ