阿寒湖経済圏を揺るがしてきた「毛並み・先物」市場が、未曾有の危機に瀕している。これまでマリモの繊維密度や光沢をトークン化し、高値で取引されていた『NFT(N・毛・F・ティ)』だが、ここ数日で湖底の個体群が突如として「完全なるツルツル化」を遂げ、担保としての価値がゼロになるという事態が発生した。トレーダーたちは「毛並みが資産価値の根源だったのに、ただの緑色の岩になってしまった」と悲鳴を上げ、主要な取引所である湖底証券取引所は無期限の取引停止を決定した。この「ツルツル・ショック」は、かつての『凸凹(でこぼこ)債』暴落の傷も癒えぬ市場にさらなる追い打ちをかけている。

背景には、一部のヘッジファンドが利益最大化のために導入した「光合成促進ブースト」の影響がある。この施術はマリモを急速に肥大化させる一方、副作用として繊細な毛並みが剥落し、表面が磨き上げられたように滑らかになってしまうリスクが以前から指摘されていた。先週、阿寒湖の管理当局がザリガニによる「ハサミ・担保割れ」対策として行った湖底浚渫(しゅんせつ)が、このブースト剤の濃度を一気に希釈し、結果としてマリモの代謝バランスが崩壊。数万個体が同時に脱毛を起こし、市場は一夜にして壊滅的な評価損を計上することとなった。

事態を受け、阿寒湖の藻類経済委員会は緊急会見を開き、今後は毛並みのような「流動的資産」ではなく、光合成によって生成される「酸素保有量」を新たな経済指標とする方針を固めた。しかし、市場関係者からは「すでに酸欠格差で疲弊している市場に、新たな通貨制度を導入してもただのインフレを招くだけだ」と冷ややかな声が上がっている。かつては『丸すぎる』という内部情報だけでインサイダー取引が横行したこの界隈も、いまや残ったのは何も映さないテカテカの緑色の岩だけという、極めてシュールな光景が広がっている。

世間からは「毛がなくなった瞬間に損切りするメンタルが試されている」「そもそも毛に価値があるという発想がバブルの極み」「これからはテカテカの磨き上げられた個体こそが高級品になる新時代が来るのでは?」といった皮肉が相次いでいる。投資家たちの阿鼻叫喚は夜の湖底に響き渡り、阿寒湖は今、史上最も平穏で、そして最も経済的に冷え切った静寂に包まれている。