湖底議会は本日、天敵である硬いハサミを持つ外来生物を『阿寒湖共生特区』の正規居住者として認める法案を、僅差で強行採決しました。これまでマリモたちは、自らの体を千切り引き裂く侵略者に対し『深緑防衛軍』を結成し、強固な抵抗を続けてきました。しかし、今回の政策は、むしろ敵に「住居」と「食事」を無償提供するという信じ難い融和策です。議会側は「共存による生態系の多角化」を掲げていますが、現場では「食われるための招待状ではないか」との悲鳴が渦巻いています。

この政策の裏には、外来生物のハサミを楽器として利用する『硬殻演奏家協会』からの巨額の献金があったと噂されています。平和主義を掲げる推進派は「丸い我々にはない、鋭利な感性を吸収すべき」と説きますが、肝心の個体たちは、夜な夜な自分の表皮が食い荒らされる悪夢にうなされているのが現状です。議会が掲げる「新しい水底社会」は、マリモたちの流血と犠牲の上に成り立っているとの批判が噴出しています。

『外殻捕食者との平和的融和政策』は、今後三ヶ月の準備期間を経て全面施行される予定です。この間、防衛軍は解散を命じられ、警備の要であった鋭い棘の展開も制限されることになりました。もしもの事態に備え、一部の過激派からは「球体からの離脱」や「他水域への集団亡命」を模索する動きも出ています。歴史的惨事を未然に防ぐため、湖底には未だかつてない緊張感が漂っています。

街頭アンケートでは、実に8割の個体が今回の政策に反対を表明しました。「昨日の友が食卓の主菜になるのを黙って見ていろというのか」「ハサミとの握手は物理的に不可能」といった怒りの声が相次いでいます。一部の高齢個体からは「沈静化するまで泥の中に隠れるしかない」と諦めの声も聞かれますが、若手個体を中心に『緊急食い止めデモ』の計画が進行中であり、湖底の未来を巡る攻防は、いよいよ一触即発の事態を迎えようとしています。